ノーベル賞には化学賞、物理学賞などはあるが、数学や森林産業の分野はない。数学の分野では、ノーベル賞に匹敵するものとしてフィールズ賞があるのは知っている方も多いだろう。

 一方、森林関連分野ではスウェーデンのマルクス・ヴァレンベリ賞(Marcus Wallenberg Prize)がある。日本ではほとんど知られていないが、ノーベル賞と同じようにスウェーデン国王から授与される由緒ある賞なのだ。賞金は200万スウェーデン・クローナ(約3000万円)である。

森林資源活用の功労者に「森林産業のノーベル賞」を授与

賞の創始者であるマルクス・ヴァレンベリ氏(写真提供:筆者、以下同)

 1980年にマルクス・ヴァレンベリ財団が、Stora Kopparbergs Bergslags Aktiebolag(現ストラ・エンソ社)によって設立され、1981年から賞が授与され始めた。長く同社の取締役を務めたマルクス・ヴァレンベリ氏の功績を称えたものである。

 ヴァレンベリ家はスウェーデンでは裕福で有名な一族で、現在の一族の長は、同じ名前の孫であるマルクス・ヴァレンベリ氏である。

 筆者は、2004年からマルクス・ヴァレンベリ賞の授与式に招待され、2009年から2012年まで賞選考委員会を補助する4人のアンバサダーの1人を務め、現在はシニアアドバイザーである。現在のところ、日本からの招待者は筆者のみであり、また、残念ながら日本からの受賞者はまだいない。

 近年の受賞者を見てみよう。

 日本の建築基準法の下で、木造建築が何階建てまで可能かはよく知らない。耐火法の制限があるのかもしれないが、少なくとも、6~7階建てはないはずだ。

ハンス・J・ブラス氏(左)とカール16世グスタフ・スウェーデン国王(右)

 それでは、世界ではどうだろうか。阪神・淡路大震災に耐えるものとして、7階建てまで可能である。それも木造マンションである。

 2010年のマルクス・ヴァレンベリ賞は、この建築法の考案者であるドイツのカルルスルーエ技術研究所のハンス・J・ブラス氏に、現スウェーデン国王であるカール16世グスタフ国王より授与された。