本記事はLongine(ロンジン)発行の2013年8月12日付アナリストレポートを転載したものです。
執筆 持丸 強志
本資料のご利用については、必ず記事末の重要事項(ディスクレーマー)をお読みください。当該情報に基づく損害について株式会社日本ビジネスプレスは一切の責任を負いません。
投資家に伝えたい3つのポイント
●自動車セクターで、完成車と部品のどちらに投資すべきかは、さほど重要な問題ではありません。
●完成車と部品との株価パフォーマンスの差異を、投資成果に反映させるのは至難の業と考えます。
●個人投資家は、長期投資ができるメリットを最大限活用しましょう。
完成車と部品はどちらが買いなのか?
私が証券会社のアナリスト(セルサイド)だった時、機関投資家から決まってよく受ける質問がいくつかありました。その中で最も多かったのが「完成車と部品、どちらに投資すべきか?」という質問で、特に外国人投資家から非常に多かったと記憶しています。第1四半期決算発表が終わって、目先は大きなイベントが予定されていない今、改めてこの質問を考えてみたいと思います。尚、ここでいう「完成車」とはトヨタとか日産のような自動車メーカー、「部品」はデンソーやケーヒンのような自動車部品メーカーを指します。
アナリストは担当セクターに思い入れがある
ある日、私はこの質問をしてきた機関投資家に「他のアナリストはどう言っているのですか?」と聞いてみたところ、「意見は全く分かれている」とのことでした。私が聞いた範囲ですが、どうやら、完成車担当のアナリストは「完成車が有望」と答えて、部品担当のアナリストは「部品が有望」と答えているようです。少し前までは、特に外資系証券会社においては、完成車と部品は別々のアナリストが担当していました。私もそうでしたが、やはり、自分が担当するセクターに“思い入れ”があるのではないでしょうか。
完成車と部品、各々が優位であるという理由
私は他のアナリストの意見を直接聞いたことがありませんが、完成車を推奨する理由としては、自動車産業では完成車が企画・開発で主導権を握っている、部品メーカーに対する価格交渉力が強い、等があるものと推測します。また、部品を勧める理由としては、高品質が評価されて日本車メーカー以外への拡販が進む、部品の共通化が定着して数量効果が拡大する(コストダウンが拡大する)、等があると推測します。どれも相応の説得力があると思いますが、そもそも、完成車と部品で投資成果(パフォーマンス)に大きな差異が生じるものなのでしょうか?
どちらでも好きな方へ投資を
私の考えは、どちらでも好きな方でいい、ということです。完成車にせよ、部品にせよ、中長期的な利益成長が望め、株主価値の拡大が見込める企業に投資することが基本、尚且つ、最も重要だと思うからです。ただし、「自動車部品株の投資入門」シリーズで書きましたが、自動車産業全体の動きを理解することが前提になります(特に自動車部品メーカーへの投資に関して)。3ヶ月毎に結果を求められる機関投資家と違い、個人投資家は長期投資ができるという大きなメリットがあります。このメリットを最大に活用して欲しいところです。
ただ、「どちらでも好きな方でいい」と書くと、「無責任ではないか」とお叱りを頂戴するかもしれません。そこで、過去の株価パフォーマンスを中心に、少しだけですが、私なりの分析を加えてみます。