昨年暮れに開催された「G8認知症サミット」をきっかけに、高齢化社会におけるグローバルな課題の解決について、黒川清代表理事にお話をうかがった。
前回は、グローバルな課題としての認知症、そして個人やコミュニティの独立についてがテーマだった。2回目の今回は、ビッグデータ、そして持続可能な社会保障制度について聞いた。
「ビッグデータ」について
――前回、これからは自治体レベルで「ビッグデータ」を見ながら様々な施策を進め、その情報を他の自治体や国と共有しながら、共通の問題を解決していくような時代が来るのかもしれないというお話をうかがいました。
最近は「ビッグデータ」という言葉をよく耳にするようになりましたが、G8認知症サミットの共同声明でもこの言葉が出てきました。今、なぜ「ビッグデータ」という言葉が出てくるようになったのでしょうか。
黒川 G8認知症サミットの共同声明では、認知症というグローバルな課題を解決していくために重要な領域の1例として「ビッグデータ構想」が挙げられています。
今盛んに話題に上るビッグデータは、物事を判断するために、共通のデータベースとして「ビッグデータ」を活用して、迅速に解決策を見出そうという構想です。
もっとも、一言で「ビッグデータ」と言っても、それぞれが違ったスケールで考えているところもあると思います。「デジタル」技術の大進化とコスト低下で可能になってきたのですね。
――「物事の判断にデータを活用する」ということですが、現在はどのような状況ですか?
黒川 高齢化など社会的状況の変化によって「限られた医療費の中でどのような医療サービスを提供するか」ということが議論されるようになりました。すると、医療の費用対効果の議論が起こります。
その施策は患者さんの健康状態や生活の質を改善したか、そのために費やされた費用は患者さんの健康状態や生活の質の改善に見合っているかが問われるようになったわけです。
結果として得られた患者さんの健康状態やQOL(クオリティー・オブ・ライフ)などは、「アウトカム」と呼ばれるようになり、施策、医療サービスあるいは治療の指標として用いられるようになりました。
それを確認しながら政策の判断もできないか、という動きが世界中で広がり始めた。
ところが日本では医療の費用対効果を議論するための初歩的なデータがないことが分かった。これまで「医療の費用対効果を見ながら・・・」という発想がなかったのだから、初歩的なデータがないことは当然と言えば当然です。