日本が世界に自動車や家電製品を集中豪雨のように輸出して、恐れられた時代を覚えている人がいるだろうか。そのころ欧米諸国が日本からの輸入を制限したり「自主規制」を要求したり、「構造協議」で日本の輸入拡大を要求したりしたものだ。懐かしい時代だ。もうずいぶん遠い昔のように思える。
1月14日に発表された貿易統計(速報)では、日本の貿易赤字は1兆2543億円で、17カ月連続の赤字だ。経常収支も5928億円の赤字で、過去最大になった。まだ元気なのは自動車だけで、電機製品はすでに輸入超過である。
「貿易立国」を卒業した日本で需要不足が深刻化する
貿易赤字そのものは悪ではない。輸出するのは、その代金で輸入して消費するためだから、帳尻が常に合っている必要はない。しかし貿易赤字の3割以上は原発の停止による化石燃料の輸入増で、これは日本の富が中東に流出するだけだ。
さらに注目されるのは、所得収支(海外の投資収益)が9002億円と、下の図のように2兆円を超えた昨年のピーク時から大きく減少していることだ。この1つの原因は、急速なドル高で海外からのドル建ての配当や金利収入が増える「Jカーブ効果」が修正されたこともあるが、所得収支の黒字で貿易赤字を埋められなくなったことを意味する。
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