年明け早々、カンボジア情報省の大臣判断で、タイのテレビ局MCOTよりカンボジアで初の大学対抗ロボコン(以下ロボコン)の開催に関し全面的な指導をしてくれる、という申し出を受け入れることになった。

 つまり、カンボジア政府としての判断ということである。私の思いつきで動いてみたら、なんだかスゴイことになってしまったような気がする。しかし、肝心なのはここから先なのである。

ロボコン開催日決定。いの一番に“殿様”が差し出したものは?

 情報大臣によって開催日も決定した。2014年3月29日(土)だ。

 常に「ケツ(テレビ業界用語でゴールのこと)」に向かって、何をどう作業していくかを考えてきたのが、私のようなテレビプロデューサーの仕事だ。

 だから、こうしてゴールが決まると、何をいつまでにやらなければならないか、スタッフをどう組織していくか、そして何より今回の場合はどうやっていつまでに大会開催と番組制作のためのお金を集めるか、ということを考えてしまうのである。

 「時間ないよなあ・・・」と思っていたら、カンボジア国営テレビ局の副局長、“松平の殿様”は1枚の紙を私に差し出した。

 「これね、ジュンコさんにどうしても見せたかったのです。これ、カンボジア・ロボコンのロゴデザイン。私が作りました」

 ああ、ロゴデザインね。確かにそれは大事ですね。しかも、殿様自らデザインしたそれは、びっくりするほど精巧にデッサンされていて、「へえ、殿様ってこういうデザインの才能があったんだ」と思わせる出来だった。

 まずは、殿様が「参加感」を持ってくれたことはとても大事なことなのである。まあ、これも一歩前進と言えるのである。

 「ああ、いいですねえ、殿様。このデザイン、グラフィックに起こしてロゴにしましょう」と私は言って、「で、殿様、3月29日だから、スケジュールをどうするか考えないと」と言いかけた。すると、殿様はこう言うのである。

 「ジュンコさん、それと大事なことなんですが、賞品はどうしますか?」

 え? 賞品?

 正直言って、賞品のことなんか、最後に運営資金が余ったら考えようと思っていた。もちろん賞品も大事だけれど、直前になって何とかする類のことで、それよりスケジュール管理や、スタッフ組織のことや、お金のことの方が遥かに大事だと私は考えていたからだ。