7月4日、ロシアが6月から実施している大規模な軍事演習「ボストーク2010」が、ロシアの極東地域で実施された(択捉島でも実施された)。メドベージェフ大統領はオホーツク海に浮かぶ原子力重巡洋艦「ピョートル大帝」号の甲板から、演習の様子を双眼鏡で視察していた。

 「ボストーク」は2年に1回実施される。今回の演習には兵員2万人、空軍機70機、船舶30隻が参加していた。前回の「ボストーク2008」は兵員8000人の参加だったので、今回は2倍以上の規模である。

 択捉島で実施したのは「日本を牽制するため」だとメディアは伝える。しかし、それは間違っている。ロシアにとってボストークは、はるかに大きな意義と狙いがある。

 広大なシベリア・極東地域は豊富な資源に恵まれているが、ロシア人の人口が少ない。最近、中国の経済と軍事力が強大化しつつあり、シベリア・極東地域の地政学環境は急速に変わりつつある。ロシアがソ連崩壊後に疲弊した軍事力を復活させ、同地で軍事的な存在感を示せるかどうかは死活的な問題である。

 ただし、シベリア・極東地域をロシアが掌握するためには軍事力だけでは十分ではない。メドベージェフ大統領は軍事的な存在感を強めながら、経済発展や国境の安全を促進する政策を打ち上げている。

人口で中国・黒竜江省に圧倒される

 軍事的な優勢を保っても、経済競争に負けてしまえば軍事力は役に立たなくなる恐れがある。だからロシアにとってカギとなっているのは、広大なシベリア・極東地域の開発である。

 そうした考えのもと、メドベージェフ大統領は「ピョートル大帝」号に乗り込む直前の7月2~3日、ハバロフスクとブラゴベシチェンスク(中国との国境付近にある都市)で2つの会議を開催した。

 ハバロフスクは、サハ共和国、 沿海地方、ハバロフスク地方、アムール州、カムチャツカ地方、マガダン州、チュクチ自治管区、サハリン州、ユダヤ自治州を含む「極東連邦管区」の首都である。

 大統領は、外務大臣、政府の閣僚、地元の責任者らとともに、シベリア・極東地域の経済・社会発展の問題を審議した。

 この地域は、ロシアの36.4%を占める広さがある(622万平方キロメートル、日本の16.4倍)。しかし、全ロシアの人口の4.6%しか住みついていない。

 極東連邦管区は中国の黒竜江(こくりゅうこう)省と接している。両側の人口には大きな開きがある。極東連邦管区の人口は約700万人。それに対して、黒竜江省の人口は4000万人弱もいる。