舗装された国道から、何の目印もない赤土の脇道に入り、曲がりくねりながら進むこと数十分、とある農村の集会広場にたどり着く。

カンボジアの農村で定期的に開催されている絵画教室。 参加するカンボジアの子供たちの数も増え、絵のレベルも上達してきている

 ボランティアやNPOなど、日本人によるいくつかの活動の支援先となっているこの農村では、日本人指導による絵画教室も営まれている。

 色鉛筆やマジック、絵の具などを手に、カンボジアの子供たちが目を輝かせながら、白いキャンバスに思い思いの絵を描いていく。

 子供たちへの基礎教育すら行き届かず、情操教育にいたってははるか遠い未来の話とも言うべき現状のなか、「せめて目と手の届く範囲内だけでもカンボジアの子供たちに絵を描く楽しさを伝えたい」と、日本人有志によるボランティアで始められた絵画教室は、次第にカンボジア地元民に温かく受け入れられていった。

 今やその生徒の数は、地方出張教室も含めると数百人を数える規模に至っている。

 カンボジアの子供たちに絵の楽しさを伝える、と口で言うのは簡単だが、そこでは画用紙から絵具、鉛筆等の画材が生徒の人数分必要となり、それらの調達は日本人有志ボランティアによる“自腹”でまかなわれている。

 この活動を知った心ある外国人からの寄付や募金が届けられることもあるが、常時安定的に望めるものでもなく、生徒数の増加はそのまま運営予算の逼迫へとつながる。

絵画教室を定期的に訪問しているというクリエイティブデザイナー中村英誉氏。絵を描く子供たちの無垢で斬新な発想に、いつも刺激を受けるという

 カンボジアを拠点に活動するクリエイティブデザイナー中村英誉氏(なかむら・ひでたか、以下敬称略)は今、スマートフォンのゲームを通して、このカンボジアの子供たちと日本の若者たちの架け橋となるゲームプロジェクトに注力している。

 ゲームのタイトルは「そーしゃる天使」。すでにアイフォーン版は今年10月にリリース済みで、無料ダウンロード可能だ。

 中村がカンボジアの首都プノンペンに移住し、カンボジア現地でのコンテンツ制作やメディアビジネスに取り組んでいることは、以前このコラムでもご紹介した(「日本の起業家が集結し始めたカンボジア」)。