現在普及しているソーシャルゲームという言葉の“ソーシャル”は、“ソーシャルネットワーキング”の意味合いで用いられているが、中村の取り組みは“社会貢献活動”という意味合いで“ソーシャル”という言葉を冠したゲームと言えるだろう。

 また、中村がこのプロジェクトを通して光を当てたいのは、支援が届く先であるカンボジアの子供たちだけではないことだという。

 「今回のゲームは日本語版ですが、ほぼすべてカンボジア人ITスタッフで開発しています。カンボジアにもこういう技術力があるIT人材がいる、ということもアピールしたい」(中村)

ゲーム開発を支えるカンボジア人ITエンジニアの実力

 カンボジア首都プノンペンの空の玄関口、プノンペン空港から、プノンペン市内に向かう国道沿い、空港と市内のほぼ中間地点に位置する王立プノンペン大学(Royal University of Phnom Penh、RUPP)。

 1960年設立、現在は学生数1万2000人超、教職員455人を抱える総合大学であるRUPPは、カンボジアで最も大きな規模と長い歴史を誇る当国の最高学府である(同大学ホームページより)。

 RUPPの情報技術学部は、大学がそのレベルアップに最も注力する学部の1つである。その情報技術学部の卒業生の中でも特に優秀なメンバーを束ねて、中村と共に「そーしゃる天使」開発の一翼を担うのは、カンボジア人ITエンジニア、Mom Cleomora 氏(モム・クレオモラ、以下モム)。

 日本への国費留学第1期生であり、留学終了後も日本に残り大手企業でITエンジニアとして約10年間勤務、日本語も堪能なモムは、中村と日々やりとりしながら「そーしゃる天使」のシステム開発面を担っている。

 2008年にカンボジアに帰国したモムは、自らの日本での経験や語学を生かし、日本とカンボジアの架け橋となるITビジネスをいくつか手がけてきた。

 すでにカンボジアでの事業パートナーとなっていた中村と、この「そーしゃる天使」プロジェクトの趣旨に共鳴し、2012年10月からゲーム開発に着手。約1年の開発期間を経て今年10月、ゲームリリースにこぎ着けた。

王立プノンペン大学(RUPP)の校内。 カンボジアの最高学府であり、優秀なカンボジア人学生が日々勉学に励んでいる
カンボジア人ITエンジニア、Mom Cleamora 氏(写真中央)。 日本での留学および勤務経験を活かし、日本とカンボジアの架け橋となるIT事業に取り組んでいる