キリスト教に次いで、世界で2番目に信徒の数が多いのがイスラム教である。イスラム教徒の人口は世界で15億人を超えると言われる。2050年にはイスラム教が世界最大の宗教になるという予測もある。

 現代イスラム研究センター理事長の宮田律さんは、著書『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』(新潮社)の中で、「経済交流、安全保障、また文化交流などにおいても、イスラムの人々とのつき合いは今後ますます重要になる」「日本人はイスラムに対する正しい知識や理解を身につけることが求められている」と説く。

イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』(宮田律著、新潮社、720円、税別)

 本書によれば、イスラム世界の人たちは日本が大好きで、日本のことを尊敬してやまないのだという。トルコが親日の国であることはよく知られている。だがトルコだけではない。中東ではイランもエジプトもサウジアラビアも、またアジアではインドネシアもマレーシアも、イスラム世界の国はどこも日本に対する親日感情が極めて強い。

 しかし、私たち日本人はあまりにもイスラム世界のことを知らない。文化も価値観も日本人とは分かりあえない、不可解極まりない世界だと考えている日本人は少なくない。

 どうやら日本人にはイスラムに対する誤ったイメージ、先入観が相当根深く植え付けられているようだ。実は本書も、日本人のイスラム世界に対する無理解のために、あやうく日の目を見ずに葬り去られてしまう危険性があった。

「イスラムって怖いですよね」が一般的な反応

──本書はもともと新潮社から出る予定ではなかったそうですね。

宮田律氏(以下、敬称略) この本の元になる原稿は、2013年3月に日本経済新聞出版社から刊行される予定だったんです。もう装丁も出来上がっていました。ところが、1月にアルジェリア人質事件(注:イスラム系武装勢力がアルジェリア東部の天然ガス関連施設を襲撃し、日本人10名を含む約40人が犠牲になった事件)があったため、急きょ発行が取りやめになってしまいました。

──どうして取りやめになったのですか。日経はなにを心配していたんでしょう。