アメリカ東海岸・ペンシルベニア州のスリーマイル島(TMI)原発からの現地取材報告の5回目である。今回も、TMI原発事故を取材したロバート・スイフト記者(60)のインタビューを続ける。今も当時と変わらずペンシルベニア州の州政府・議会を担当するベテラン記者である。

 事故当時、住民避難など重要な事故対策はペンシルベニア州政府の管轄だった。州政府を取材する記者たちも多数常駐していた。ホワイトハウスが介入するまで、主だった記者発表は州政府が行った。記者たちは州政府の会見に殺到した。しかし、電力会社の会見も16キロ離れた都市で開かれて、相互に矛盾する情報が発表された。メルトダウン、住民避難、水素爆発といった重要な出来事のたびに情報が錯綜し混乱が深まった。

 電力会社は情報を出し渋った。発表担当者ですら事態が分からない状態だった。州の報道官が電力会社に何度も何度も電話をかけ、圧力をかけてやっと情報を少し出すという状態だった。

 加えて電力会社の情報は矛盾をはらむものであり、結果として避難に必要な正確な情報が住民に届けられることはなかった。

怒号が飛び交った電力会社の会見

──電力会社も州政府とは別に記者会見をしていたようですね。ハーシー市(ハリスバーグから16キロほど)の本社で開かれたと聞きます。

 「金曜日にハロルド・デントン(注:ホワイトハウスから送り込まれた『大統領の全権委任大使』、NRC委員長)が到着するまで、そちらはカオスでした。会社側も記者たちもお互いに怒鳴り合っていた。情報の提供という意味では最悪でしたね。

 その後『土曜日か日曜日にカーター大統領が現地入りする』(注:実際には4月1日、日曜日)という話が入って、私はミドルタウン(TMI原発の立地自治体。州都ハリスバーグから南20キロ)の高校の体育館で開かれた記者会見に行きました。たくさんの記者たちが通りを行き交っていました」

──なぜ電力会社の会見はカオスになったのですか。

 「前後で食い違う、矛盾する内容を公表したからです。副知事もデントンの到着前は『電力会社が提供する情報は矛盾している』と言っていた」