週刊NY生活 2013年11月16日467号
市政監督官のビル・デ・ブラシオ候補が大勝したNY市長選ですが、ブルームバーグ市長の政策を「富裕層優遇」と真っ向から批判してきたことが功を奏したというより、私にはあの高校生の息子ダンテ君の超アフロヘア人気がカギを握っていたと見るのですがミーハーに過ぎるでしょうか?
さてハイラインの建造や歩行者天国の拡大、最近では(これは人気イマイチですが)シティバイクの設置といろいろとアイデアマンだったブルームバーグ市長ですが、確かに振り返れば市の貧困率は21%と過去最高ですし、NYPDによる「ストップ&フリスク(通行人を呼び止めての職務質問と身体検索)は人種プロファイリング(人種偏見を基にした思い込みの捜査手法)だとして風当たりが強くなっています。
ここら辺で違う風がほしいと思った向きがデ・ブラシオというほとんど無名だった候補へ流れたのでしょう。
ところでこのストップ&フリスク、一般の注目を浴びたのは8月に地方判事が憲法に違反すると判断したのが発端です。警官が「白人だったならば呼び止められなかったであろう黒人やヒスパニックの人々」を日常的に呼び止めており、市警は「間接的な人種プロファイリング施策」に依拠しているとしたのです。
しかしそれが市長選挙直前の10月31日、思いがけぬ展開を見せました。控訴審がストップ&フリスク改革を停止し、警官たちに事実上同手法の継続を容認したのです。
そんななか、19歳の黒人男子大学生トレイボン・クリスチャンがこの4月にバーニーズNYで大好きなラッパーがしていたのと同じ350ドルのフェラガモのベルトを購入したところ、店から1ブロックのところで私服警官2人に呼び止められ、「こんな高いものを買えるはずがない」として手錠を掛けられ、分署で2時間も拘束された件が公になりました。
クリスチャンはIDやレシートを見せたのですが偽造だと相手にされなかったとか。これとは別にやはりバーニーズで21歳の黒人女性が2500ドルのセリーヌのハンドバッグを買って同じような目に遭っていたことも新聞で報じられました。ふたりともこれを人種偏見の違法行為としてNYPDとバーニーズを訴えてニュースになったのです。