お母さんに頼まれた牛乳を買いに行っただけで警察に職務質問、身体検査される町。こんな町にあなたは住みたいと思うでしょうか。

 ニューヨーク市警による路上での「Stop, Questioning and Frisk(呼び止め、職務質問、身体検査)」は2002年の年間1万件弱から現在は6倍に増え、約6万件*1になっています。

かつての日本人収容所を思わせる、有色人種に対する路上での取り調べ

 主に銃犯罪の防止のために行われているのですが、呼び止められたうち1.9パーセントしか銃は見つかっていません。9割の人が無実で*2、残りの1割も半分の人たちが取り調べた結果無罪放免になっていると言われています。

 そして、呼び止められた人種の内訳は黒人が52.9%、ラティーノ(中南米人)が33.7%*2と大半が有色人種なのです。

 最初この話を聞いた時、警察に呼び止められた経験のない私にはピンときませんでした。

 でも、肌の色が黒いからというだけで、警察に呼び止められ、外出する気も失せ、授業や仕事に遅刻する、また警察からセクハラを受けることもあると聞いたとき、かつて第2次世界大戦中にアメリカに住んでいた日本人が「日本人」というだけで何も戦争に関与していないのに取り調べられたり、強制収容所に入れられていたことを思い出し、「そんな場所には住んでいたいと思わない」と実感しました。

 日本でも「服装や髪型がストリートファッションっぽいだけで呼び止められましたよ」と聞き、アメリカほどではないにしても同様の問題があるのだと分かりました。

オキュパイ・ウォールストリートの警戒にあたるニューヨーク市警の巡査ら(ウィキペディアより)

 アメリカにおける有色人種と警察の戦いは歴史が長く、それはアメリカに警察ができて以来とも言えます。有色人種であるだけで取り調べられ、時には無防備なのに武器を持っていると勘違いされ殺されてしまう事件も数年に一度起きています。

 ニューヨークは1990年代からジュリアーニ市長が路上での取り調べを開始し、現在のブルームバーグ市長の下でさらに強化されました。

 治安の維持に貢献している、という意見もあるものの、路上での呼び止め等が1万件から6万件に増えても銃の発見数は178件*2しか増えず、また警察に対する根深い不信も生まれてしまっています。

*1 New York Civil Liberties Union "Stop-and-Frisk Data"
*2 New York Civil Liberties Union Briefing "Stop-and-Frisk 2011 (pdf)"