「本流トヨタ方式の土台にある哲学」について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。

 企業を取り巻く利害関係者との関係を表す「(その3)共存共栄」は、本流トヨタ方式の根幹とも言える考え方であり、行動規範でもあります。

 前回は、関連企業との共存共栄の話の一環として、1990年代前半に、筆者が上級管理者として田原工場の「自主研(トヨタ生産方式自主研活動)」をどう運営したのかをお話ししました。

 今回は、生産調査部部長時代に協力メーカー(サプライヤー)とどのようにトヨタ自主研を展開したかについてお話しします。

協力メーカー50社と自主研を実施

 筆者は1993年から2年間、生産調査部に在籍しました。

 生産調査部には改善のベテランの部長クラスが5人いました。その中の1人が部全体をまとめる立場に就き、筆者を含めた他の4名の部長職は「主査」という名で協力会社間のトヨタ自主研を指導する立場にありました。

 当時の生産調査部の構成人員は、トヨタ社員が部長級5名、社内各工場からの実習生10名を含めて約60名でした。サプライヤー各社からの実習生8名も受け入れていましたので、合計68名でした。

 サプライヤーからの実習生は出張扱いでした。待遇はトヨタ社員と同じですが、給料は自分の会社から受け取るようになっていました。

 当時、自主研への参加会社は、ボディーメーカー8社と部品メーカー42社でした。活動しやすいように、ボディーメーカーは4社ずつの2グループに分けられ、部品メーカーは同業者がかち合わないように工夫しながら7社ずつの6グループに分けられていました。

 参加会社は、以下の厳しい参加要件をクリアして選ばれたところです。

(1)代表権を持った役員がトヨタ自主研の推進担当役員として任命されていること。
(2)改善を会社方針に取り入れ、業務として改善活動を進める体制にあること。
(3)現場のレベルが自主研の会場として相応しいレベルまで向上していること。

 要件(3)に満たない場合は「準メンバー」として参加してレベルアップを図ること、となっていました。

 筆者のグループは、主査(筆者)の下に課長クラス1名、係長クラス7名、実習生1名の合計10名で編成されていました。日常的には、トヨタ内の担当する工場の点検や、TPS(トヨタ生産方式)のテキストづくりなどを行っていました。

7社のサプライヤーを改善活動の会場に

 トヨタ自主研が実際にどのように実施されていたのかを説明しましょう。

 活動としては、グループごとに7社を順番に会場にして、改善をしていくことになります。ある会社が会場となると、その会社からの参加者は、改善を離れてホスト役に徹するのが習わしとなっていました。他の6社のサプライヤーは数名の実習生を連れてくるので、自主研に参加する人の総勢は30名を超える大所帯になるのが常でした。