マット安川 地方分権を考える時、首都・東京はその最重要モデルです。「国ができないことでも東京都ならできる」と、今回のゲスト・猪瀬直樹副知事は断言されます。

 東京都水道局の世界進出、地下鉄インフラの一元化、羽田空港のハブ化など、都が社会を牽引してきた事例をたくさんご紹介いただきました。

 個人的には、若者の活字離れを話す中で、「読むことは脳と精神を鍛える、活字離れの対策委員を作るべきだ」と力を込めた意見が、現役作家でもある猪瀬さんらしいと感じました。

東京水道、世界の「水メジャー」に対抗し海外進出

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:猪瀬直樹/前田せいめい撮影猪瀬 直樹(いのせ・なおき)氏(右)
東京都副知事、作家。第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『ミカドの肖像』ほか著書多数。近刊に『東京の副知事になってみたら』、『昭和16年夏の敗戦』(復刊)、弘兼憲史画の『ラストニュース』(コンビニ版)など。(撮影・前田せいめい)

猪瀬 東京都水道局は今年4月に海外展開への着手を発表しました。日本の水道というのは自治体が経営していますが、海外では民営会社が経営しています。

 「水メジャー」と呼ばれる水道会社、例えばフランスのヴェオリアは売り上げが2兆円あり、スエズも2兆円近くあります。英国のテムズ・ウォーターも1兆円近い。

 そういう水道会社が世界の水市場を狙いビジネスを展開しています。ヴェオリアは千葉県の手賀沼の浄化施設を約50億円で落札しました。

 日本もボヤボヤしていてはいけないのだけれども、日本の水道は自治体経営だから海外に進出できないと言われていました。しかし、よく考えればやり方はいくらでもあるわけです。ちょっとやり方を変えれば商売できる。

 例えば三菱商事などがこのほど、オーストラリア第2の水道会社を買収しましたが、東京水道はそこにコンサルで入るといったところまで現実化してきています。

 そもそも日本は水の浄化技術では世界一です。海水を淡水化する技術も高く、例えば東レは繊維の浸透膜のようなもので海水から淡水にする技術を持っている。そのほかにもポンプの技術、プラントを造る技術など様々な技術を持つ日本のメーカーがたくさんあります。

 ただ、そうした会社が海外に進出していますが、水メジャーは水道をシステムとして販売しているため、日本企業はみな部品メーカーにとどまっているのが実情です。

東京水道の技術は世界一。漏水率わずか3%

 東京水道の技術は世界一です。浄水場から蛇口まで、水の漏れる漏水率は3%しかない。ロンドンでも約10%あります。東南アジアでは50%のところもあり、漏水だけでなく盗水もある。漏水率3%というのはすごいことなのです。