新聞やテレビのトップニュースにはならないが、米社会に広がり続ける社会問題がある。失踪・行方不明者の増大だ。しかも未成年者が多い。
失踪者の中には家出人もいる。事故や突然死などで消息が分からなくなる場合もある。だが、連邦捜査局(FBI)の報告書によると、全失踪者の8人に1人は売春のために身売り(ヒューマントラフィッキング)されているというショッキングな数字がある。
ショッピングモールで忽然と消える少女たち
政情が不安定な新興国の話ではない。先進国のリーダー的な役割を担っている米国の話だ。
「朝、学校に行ったまま戻ってこない」
「自宅前の道路で遊んでいた娘が消えてしまった」
「ショッピングモールに行ったまま帰ってこない」
家族からこうした通報が毎日警察に寄せられている。州や場所を問わない。
8月3日、バージニア州シップマンというアパラチア山脈の麓の町から高校生アレックス・マーフィーさん(17)が忽然と姿を消した。
白の日産車を運転していたマーフィーさんが最後に目撃されたのは同日午後7時過ぎ。車を残したまま行方不明になり、2カ月近く経った今も何の手がかりもない。しかも大きなニュースにもなっていない。
全米では毎年、どれくらいの人が行方不明になっているのだろうか。集計機関によって差はあるが、FBIの発表では2012年だけで66万1593人が消息を絶っている。
バージニア州にある非営利団体、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)は、実際にはFBIの数字よりも多いと推測する。と言うのも、66万人という数字は警察に提出された行方不明届の数で、実際は90万人に達しているという。恐るべき数字である。