2020年東京五輪の開催が決まった。実に久しぶりに日本人全体を明るい気持ちにしてくれた。
招致決定に大きな影響力を持ったと言われる最終プレゼンテーションは、多くの日本人にとって、自分が日本人であることの誇りをもう一度取り戻させてくれる、ゾクゾクするほど素晴らしい内容だった。
世界中の人々が注目する大舞台でこれほど堂々と日本の長所を主張できる日本人たちの存在を目の当たりにして、自分自身も勇気を奮い立たせようと思った日本人もたくさんいるはずだ。
2020年のアジアを想像する
私自身、東京五輪開催決定を知った瞬間に一つの想いが心を突き抜けた。この五輪を本当に成功させられるかどうかは、中国、韓国、そしてアジアの人たちが心から祝福してくれるかどうかにかかっている。
そうなった時に初めて、世界中の人たちに気持ちよく明るく楽しい気分で東京に来てもらえるはずだ。そのためにはどうすればいいか。
2020年のアジアと世界を想像してみてほしい。中国は所得が倍増してますます豊かになり、ASEAN諸国やインドも賃金水準が上昇して日本企業にとっての市場が大幅に拡大する。日本のビジネスマンは国内出張のようにアジアと日本を往来しているだろう。
中国のGDPの規模は日本の2.5倍程度に達し、日中韓台合計の東アジアのGDPは米国を大幅に上回り、東アジアが世界経済のリード役となっている。アジア全体の経済緊密化が一段と進み、ASEAN諸国やインドは日本企業にとって生産拠点としてのみならず、販売市場としての魅力が高まっていく。
日本企業の製品・サービスを購入する人々は、1人当たりGDPが概ね1万ドルに達する時点を境に急増すると言われている。これが日本企業にとっての顧客層である。私の手元の推計であるが、現時点で中国国内に約3億人、ASEAN諸国合計では3000万人弱の人々が日本の顧客層に属している。
2020年になれば、中国国内の顧客層は7億~8億人、ASEAN諸国でも6000万~7000万人に達すると考えられる。その人たちの多くが日本に関心を持つようになり、できれば東京五輪にも行ってみたいと思うはずだ。
これが2020年のアジアの姿である。東京五輪を訪れる外国人の中でアジアの人々が占めるウエイトは、過去の五輪とは桁違いの高さになることは明らかである。