閣僚は辞任したが、連立にはしっかり残った

 法案成立率54.3%、史上最低の記録を残して第174通常国会は閉幕。7月11日投開票の参院選に向けて、選挙戦が本格化している。

 迷走する普天間問題、首相交代とゴタゴタ続きの終盤国会だったが、そのフィナーレを飾ったのは、民主党と連立を組む国民新党代表で金融・郵政改革担当相だった亀井静香の深夜の辞任劇だろう。

 連立離脱をちらつかせてまで郵政改革法案の今国会での成立を迫った亀井の願いは聞き入れられず、首相交代で支持率が高いうちに選挙に流れ込みたい民主党執行部が、国民新党の悲願を断ち切ったかのように見えた。しかし、その裏には、亀井のしたたかな計算があった。(文中敬称略)

連立残留もシナリオ通り

 民主党が参院選の選挙日程を優先、国会を延長しないことを決めたのは2010年6月10日。この時点で、郵政改革法案の廃案も確定した。同夜の国民新党本部で開かれた両院議員総会は「民主党はウソつきだ。連立を離脱すべきだ」との声が渦巻き、亀井も「民主党に裏切られた。閣僚も、党代表も辞める」と涙を浮かべた。

 これを押しとどめたのが、国民新党の支持母体である全国郵便局長会(全特)会長の柘植芳文。党本部に呼ばれた柘植は「連立から離脱すれば、改革法は永遠に成立しない。現場の灯を消さないで欲しい」と連立維持を涙ながら訴えた。「名を捨て、実を取る」案を最終的に亀井が飲んだ格好だが、これは亀井のシナリオ通り。

 日付が変わった11日午前1時過ぎに金融・郵政改革担当相の辞任を発表。慌てた菅直人首相の慰留を振り切る代わりに、後任として全特の支持を受ける族議員、元郵政相の自見庄三郎幹事長を押し込んだ。

ショートリリーフ?

 自見は金融については全くの素人だが、郵政改革法が成立するまでの「つなぎ役」としては適任だ。自見は就任会見で「菅直人首相から亀井代表に是非残ってほしいという電話があったが、亀井さんは強い意志で辞任した。後戻りした案と言われようが、3事業一体での国家の基本的インフラは必要だ」とした上で、「民主党とは、参院選後の臨時国会の最優先課題として、郵政改革法案の速やかな成立を図ることを確認した。小異を捨て大同につくということだ」と連立に残留する理由を説明した。

 もともと、民主党内には郵政民営化論者が多く、特に銀行・保険業務については縮小すべきとの意見も根強い。国民新党との連立さえなければ、郵政改革法案など、民主党にとって、最優先課題でもなんでもないのだ。

 逆に国民新党が改革法成立にこぎ着けるためには、最初から連立残留の選択肢しかなかった。さらに、亀井にとっては、閣僚を辞任したことで、鳩山前政権時代に普天間基地問題で閣僚を罷免された社民党党首の福島瑞穂への義理が果たせる。