日本にいるときは、東急沿線に住んでいるのだが、運転士の指差喚呼が凄い!

 東急の各駅停車の電車はのんびりと走っているので、車内は静か。だから、運転士の「ナントカよし!」という大声が、1両目全体に響き渡ることもある。頼もしい限りだ。

ドイツにはない指差喚呼はミスを減らすのに効果的

指差喚呼する車掌(ウィキペディアより)

 鉄道で使われている指差喚呼は、

1. 目で見て、
2. 腕を伸ばし、指で差して、
3. 声に出して、
4. 耳で自分の声を聞く

 というものだそうだ。そういえば、日本ではバスの運転士も、運転中、いろいろなことを声に出して確認する。

 フェーズ理論というのがある。人間の意識のレベルを5段階に分ける考え方だ。

 まず、フェーズ0は、まったく意識が働いていない状態。例えば、寝ているとき。
フェーズ1は、疲労などで注意力や判断力が低下している状態。居眠りなどで間違いを起こす確率が極めて高い。

 フェーズ2は、休憩時などのリラックスした状態で、注意力が散漫なので、これで仕事をすると、見落としや操作ミスが出やすい。また、なんとなくやる気が出ないとか、ぼーっとしている状態もこれにあたる。

 危険な作業、集中力が必要な作業をするときは、このままではまずいので、緊張を喚起するための対策が必要だ。

 そして、フェーズ3。これはフェーズ2と同じく正常状態だが、脳が明晰に動いていて、気分も前向き。間違いや操作ミスはほとんど起こさない。ただ、この理想的な状態は長続きせず、しばらくするとフェーズ2に落ちてしまう。

 そして、最後のフェーズ4は、何らかの緊急事態などに遭遇して、過度な緊張状態に陥っている場合だ。記憶や判断の回線が断ち切れて、大脳がパニックを起こす。これを防ぐため、防災訓練などを行う。

 指差喚呼は、ともすればフェーズ2に落ちようとする意識を、フェーズ3の状態に引き戻すための非常に有効的な方法であるらしい。

 鉄道労働科学研究所の実験によると、指差喚呼をした場合、それをしないときと比べて、ミスが3分の1に減少するという結果が出ているという。ただ、私は長くドイツに住んでいるが、指差喚呼というのは見たことも聞いたこともない。