アルカイダによるテロ攻撃の脅威から、米国は全世界の米国民に向け警戒を呼びかけている。北アフリカから中東にかけての地域にとどまらず、ルワンダ、ブルンジ、ジブチ、マダガスカルなどでも在外公館が閉鎖、うち19カ所については、少なくとも10日まで閉鎖を続けることが発表された。

 特にイエメンの欧米関係施設がターゲットとされるとの懸念が強く、英米はほとんどの大使館員を出国させた(日本時間7日昼現在)。

世界で相次ぐ脱獄

イエメンのサナア

 アルカイダ幹部同士のやりとりを米国が傍受したことが根拠の1つとされているが、国際刑事警察機構(ICPO=インターポール)も指摘しているように、7月に各地で集団脱獄が相次いだことも懸念を深める一因となっている。

 7月21日、イラクでは、かつて米兵による捕虜虐待が露見したアブグレイブ刑務所(現「バグダッド中央刑務所」)が武装集団の襲撃に合い、混乱に乗じて500人以上の囚人が脱獄した。

 その中にはアルカイダ系武装勢力の幹部も含まれ、アルカイダ系組織が犯行声明を出している。27日には、リビア、ベンガジの刑務所で暴動が発生し1000人余りが脱獄、29日にはパキスタンで、タリバンや過激派勢力が収監されていたアフガニスタン国境近くの刑務所が襲撃され、約250人が脱獄、「パキスタンのタリバン勢力」が犯行を認めている。

「泥棒成金」のロケの中心はカールトン

 テロへの恐怖が深まるそんな報道に紛れるように、25日、スイスの刑務所から2人の男が脱獄、そのうちの1人は国際犯罪組織「ピンク・パンサー」のメンバーであるとのニュースも入ってきた。

 それから間もない28日、陽光降り注ぐ南仏カンヌの高級ホテル「カールトン」で開催されていた宝石展示会で強盗事件があった。

 その被害総額は1億300万ユーロを超えフランス史上最高。今のところ、ピンク・パンサーの犯行との報道はないが、白昼堂々のその素早い手口から彼らに疑いの目を向ける者は少なくない。

 カンヌという街につきものの高級ブランド店や宝石店を泥棒から守っているのは、街中至る所にある監視カメラ。警察の監視センターともつながっている。それに比べ、ホテル内の警備はずっと甘いことが、今回の事件を引き起こしたとの指摘もある。

 カールトンと言えば、アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作サスペンス『泥棒成金』(1954)の舞台となったところ。そしてケーリー・グラント演じる主人公の職業はかつて「キャット」と呼ばれた有名な宝石泥棒だから、否が応でもこの映画を思い出してしまう。