参議院選挙において自民党が圧勝しました。実はこの選挙前、全国医師連盟が混合診療や医学部増設など医療に関する7つの質問を与党である自民党に提出していました。

 しかし自民党はこの質問に対して、“国民皆保険については今後も堅持すべきである”と返答するだけで、ほかの質問には返答しませんでした。実質的にほとんど“ゼロ回答”だったのです。

 要するに自民党は、選挙前に様々な医療問題を争点化することを避けて選挙に臨んだというわけです。

 選挙後、社会保障制度改革国民会議などの議論の様子が各メディアで報道されています。報道では、「医療の岩盤規制にどれだけ切り込むことができるか?」といった論調で「混合診療(保険外併用療法)」の解禁の有無ばかりが注目されているようです。

 でも、いくら「保険外併用療法」(実質的に混合診療と同じです)と言い換えたところで、これらが次々と認められれば、医療費の負担額は1桁跳ね上がり、事実上の国民皆保険の崩壊に至るのは目に見えています。

 実は、混合診療の解禁とは全く別の第三の道で医療を維持することは可能です。“医療提供体制の再編成”をきっちりと行えばいいのです。

 医療機関の統廃合を行うと医療アクセスが制限される場面もあり、多少不便さを感じるケースが出てくるかもしれません。しかし、間違いなく医療機関の質の向上を期待できる施策です。もっと議論がなされてもよいのではないかと、選挙後の今、改めて思います。

フリーアクセスにより医療機関を競争させることの弊害

 日本の病医院の85%以上は民間経営です。税率は一般企業と何ら変わりありませんし、赤字になっても国からの補填などは一切ありません。なおかつ、「フリーアクセス」という、患者がどの医療機関でも自由に選んで受診できる制度によって、各医療機関は患者獲得のため過当競争を強いられています。