週刊NY生活 2013年7月13日450号
アメリカでもクールビズの夏となり、ワイシャツ姿のニューヨーカーが目立つが、今年の夏はメンズファッションのトレンドに去年までとはちょっと違う異変が起こっている。男性ビジネスマンたちのワイシャツの胸元からポケットが姿を消え始めているのだ。
オフィスビルが立ち並ぶマンハッタンのミッドタウンで観察してみた。マジソン街を闊歩するニューヨーカーたち、とくに20代、30代の比較的若い層のビジネスマンたちのワイシャツの約7割近くもの胸からポケットが消えている。
もちろん従来型のワイシャツにポケットのあるシャツを着て歩いているビジネスマンもいるが、それは圧倒的に中高年。とくに今どきのスリムスーツを着ているようなビジネスマンの胸からは、ほぼ全員といってよいほどポケットが消えている。
胸ポケットのないワイシャツ姿で歩いていた26歳の男性ビジネスマンをつかまえてその理由を聞いてみた。
「メーカーがポケット付きのシャツを作らなくなっているのではないか。ポケットが付いたシャツをあまり見かけない。カスタムメイドで、ポケットを付けるか付けないか聞かれるけど『なくていい』っていう人が多いのでは。昔はペンとか名刺などを胸ポケットに入れていた人が多かったけど、もうそういうことをする人もいなくなった。時代遅れかな。ポケットなしは、明らかに最近のニューヨークのトレンドと言っていいと思う」と話す。
鎌倉シャツはNYに照準
昨年10月30日にマジソン街に出店したメーカーズシャツ鎌倉の米国店、「鎌倉シャツNY」の丸田彩店長は「店に入るなり、胸ポケットのないシャツはありますかと言ってくるお客さまがいます。うちではボタンダウンを除いてニューヨーク向けは胸ポケットのないシャツを販売しているので、おかげさまでお客さまからは好評をいただいています」という。
そんな鎌倉シャツも実は、昨年秋に対米進出した直後は胸にポケットがあることを理由にシャツを買わないで店を出て行くアメリカ人の客が3割から4割もいた。
これに貞末良雄会長が奮起して一大決心、ニューヨーク向けシャツのスペックを大幅に方向転換して胸からポケットを外した。以後、高品質な日本縫製の評判とも相俟って、順調にファンがニューヨークで増え続けているという。
アメリカ人にとってワイシャツは、肌着に近い存在。確かに、肌の上に直接着るTシャツやポロシャツに、もし胸ポケットが付いていたらそれは「カッコ悪い」というのは日本人的感覚でも理解できる。
ワイシャツの胸ポケットも、ニューヨーカーの目にはそれと同じように映るのかもしれない。マンハッタンで進む「ノー胸ポケ」トレンドは、日本のワイシャツ市場を激震させる「黒船の到来」となるのか注目されそうだ。
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