ジョン・F・ケネディ(JFK)大統領暗殺から50年、その長女キャロライン・ケネディが米国の次期駐日大使に内定した。
かつては公務員全般に及んでいた米国の政治任用制
父親の葬儀で当時まだ5歳だった彼女が見せるけなげな姿は、今も謎多き暗殺事件の検証番組などでよく見かける。
その知名度の高さから、政治や外交に興味など示さない人々にもアピールできる利点を指摘する向きもある。
JFKの弟エドワード(テッド)・ケネディとともに、2008年、その政権誕生に大きく貢献したバラク・オバマ大統領との近しい関係がもたらす効果も期待できるかもしれない。しかし、外交や行政の経験がないことには不安も残る。
職業外交官ではない者が「Political Appointee(政治任用制)」により大使となるケースは、近年の米国では3割程度を占めている。
しかし、その中には、大統領選での選挙資金集めなど現政権に貢献した者への論功行賞という一面を持ったものも少なくないことから、批判の声もよく聞かれる。
ダスティン・ホフマンとロバート・デ・ニーロがブラックな笑いをまき散らす『ワグ・ザ・ドッグ ウワサの真相』(1997)には、米国大統領のセックススキャンダル隠蔽に貢献した映画プロデューサーに、アフリカの小国トーゴ大使就任という褒賞を申し出るシーンがある。
まさか、そんな任用はしていないとは思うが、こうしたことは、19世紀の米国では、公務員職全般にまで及んでいるものだった。
政権政党が代われば、その多くが入れ替わってしまうということが繰り返されていたのである。
「猟官制(Spoils system)」と呼ばれるその慣習は、アンドリュー・ジャクソン第7代大統領政権時代あたりから定常化していったものだが、スティーブン・スピルバーグ監督の『リンカーン』(2012)で、その様子をうかがい知ることができる。
奴隷解放を確固たるものにするため、「合衆国憲法修正第13条(Thirteenth Amendment)」を可決させようと、「Honest Abe」とも呼ばれたエイブラハム・リンカーン大統領が票集めに奔走する姿は、この映画のハイライトの1つ。
しかし、それはポストと引き換えのあからさまな集票行為であることに、違和感を禁じ得ない。当時、そうしたことは、特異なことではなかったのである。
とは言え、当然のことながら、すべての「功労者」に、望み通りの褒賞が与えられたわけではなかった。なかには自分は貢献したのだと勝手に思いこむ者だっている。