アメリカでは医療費、特に大腸内視鏡検査について「高額である」との議論が涌き起こっています。
6月1日のニューヨーク・タイムズの社説「270兆円の医療費」では、大腸内視鏡検査の値段は、アメリカ全体で一番安いボルチモア州で19万円、いちばん高いニューヨーク州では85万円と報告されています。
日本では、医療費の単価についての議論がマスコミで真剣に行われることはほとんどありません。しかし、医療を成長戦略の一部として掲げる以上、“医療の値決め“は避けて通れない検討課題です。
私は、日本の医療は価格の議論を避けて、”格安“で”最高の医療“をという幻影を追い求めているために、成長産業と成り得ない不毛地帯に陥っている気がして仕方がありません。
今、アメリカにおいて、医療価格についてどのような議論がされ何が問題点なのかを理解することは、決して無駄ではないはずです。
アメリカの大腸内視鏡検査価格の問題点とは?
大腸内視鏡価格における論点を、ニューヨーク・タイムズは3つ指摘しています。
1つ目は、同じ大腸内視鏡検査なのに、どこで検査を受けるかで価格が変化するということです。記事内では、同じ医師の大腸内視鏡を病院で受けた場合の検査代金は91万円だったのに対して、診療所で受けた場合は53万円と価格が大幅に変わる事例が挙げられています。
これは、わざわざ病院で受ける必要のない検査・処置ならば、診療所で受けた方が施設設備代金を大幅に節減できることを示しています。
2つ目は、本当に医学的に必要な処置内容なのかを見直すことです。
例として取り上げられた大腸内視鏡検査代金「63万円」の内訳は、29万円が設備施設利用料金、24万円が麻酔代金、10万円が医師の技術料となっています。ここで問題となるのは24万円の麻酔代金です。大腸内視鏡に本当に全身麻酔が必要なのでしょうか?