国内に50基ある原子力発電所は関西電力の大飯3、4号機(福井県)を除いて48基が運転を停止したままだ。その分、火力発電所を動かすので、電力会社の燃料費は2013年度で東日本大震災前よりも3兆8000億円も増える。電気代は震災前より1割上がった。
しかし、政府が原発を停止させているわけではない。国が定めた定期検査はすでに終わっており、法的には電力会社はいつでも再稼働できるという。これはどういうことか。
東京電力の福島第一原発の事故を機に、政府の原子力安全体制が問われ、その結果、昨年9月に原子力規制委員会が発足した。公正取引委員会などと同様、独立性を保証されている3条委員会だ。原発を推進していた、いわゆる「原子力ムラ」とは一線を画していると言われる。
現に日本原子力発電の敦賀原発(福井県)の2号機直下の断層を活断層と厳しく認定、「活断層ではない」と主張する日本原電と対立している。では、原発は規制委が稼働を停止させているのか。
「電力会社はただちに再稼働していい」発言で物議
「規制委が再稼働してはいけないと言うのは違法だ」。こう語るのは、経済産業省で電気料金の値上げを審査している電気料金審査専門委員会の安念潤司委員長(中央大学法科大学院教授)だ。
「電力会社が原発を再稼働させるのは完全に適法。規制委員会に再稼働についての審査権はありません。電力各社はただちに再稼働していい」
安念氏は3月に関西電力と九州電力の料金値上げの査定方針をとりまとめた会合の場でこう発言、反原発を主張する人々などの間で物議をかもした。
では、なぜ止めているのか。「原発を止めていなければいけないという世の中の空気を見て、電力会社が自主的に止めているのでしょう」
「法治」より「空気」が支配する日本社会。この先も原発が止まったままだと、どうなるか。「電気料金は50%値上げということにもなるでしょうね」と言う安念氏に、原発再稼働の法的根拠と電気代値上げの行方を聞いた。
********************
井本 原発はどういう条件が整うと再稼働できるのですか。
安念 法律上、原発は1年に1回定期検査しなければなりません。昨年8月に再稼働した関西電力の大飯3、4号以外は、同年5月に定期点検に入った北海道電力の泊3号を最後にすべて定期検査に入りました。
正確には東電の福島第二原発の4基だけは震災後に自主的に停止し、点検中という形です。つまり福島第二を除く44基は昨年5月以来、長い定期検査に入ったことになる。いずれにしろ48基が止まったままです。