5月6日、北海道電力の泊原発が定期検査に入って運転を停止し、日本は「原発ゼロ」の状態になった。定期検査を終えた関西電力大飯原発3・4号機は今のところ運転再開の目途が立たないので、このまま発電能力の3割がないまま夏を迎えると電力不足が懸念されるが、問題はそれだけではない。

原発停止でGDPの1.2%が吹っ飛ぶ

 電力の48%を原子力に頼る関電では、原発がすべて止まったままだと真夏のピークには大幅な電力不足が見込まれる。関電の資料によれば、今年の夏には16.3%の供給不足が起こると予想される(下の表)。大停電を防ぐには、昨年のような電力制限令の発動や、最悪の場合は計画停電も考えられる。

 さらに問題なのは、原発を止めることで発生する火力発電所の燃料費の増加だ。

 政府の需給検証委員会は、原発の停止によって電力9社の2012年度の燃料費は2010年度に比べ3兆1000億円増加すると予想している。液化天然ガス(LNG)と原油の価格が前年度比2割上昇すると、燃料費の増加額は3兆8000億円に拡大する。

 2011年度の貿易赤字は4兆4000億円。このうち約3兆円が燃料費の増加によるものと考えられるので、今年度末までに6兆円以上の燃料費が浪費されることになる。これはGDP(国内総生産)の1.2%以上であり、ゼロ成長状態が続く日本経済には大打撃だ。しかもこの6兆円が国内に流れるのならまだしも、中東など海外に流出するだけである。