週刊NY生活 2013年5月18日443号
ニューヨークの駅のなかを歩いていると、どこからか生演奏の音楽が聞こえてくる。しかもすごく上手! と思った人は少なくないはず。
それもそのはず、ニューヨークの地下鉄構内などで演奏しているミュージシャンたちは、年に一度開催されるオーディションを受けて合格したプロやセミプロの音楽家ばかりだからだ。
音楽家たちの演奏を取り仕切っているのは、メトロポリタン交通局(MTA)の芸術活動を支援する組織、アート・フォア・トランジット(AFT)のプログラムの一つであるミュージック・アンダー・ニューヨーク(MUNY)。
AFTは公共交通機関の利用者のために設備・環境の快適さを高める目的で、多くのビジュアルアートやパフォーミングアートのプログラムを運営している。
例年5月にオーディションが行われ、今年は13日にグランドセントラル駅内バンダービルトホールで実施された。300組の音楽グループが応募し、今年も30組が認可された。
ミュージック・アンダー・ニューヨークは、地下鉄駅構内などで活動するミュージシャンやパフォーマーを厳選し、許可を与えることによって、公共交通機関の環境をより魅力的にするとともに、公共の安全性を高めることもねらいとしている。1985年に試行され、87年1月から正式に活動をはじめた。
現在100以上のパフォーマー及びグループが約25ヵ所で週150回以上のパフォーマンスを行っており、その内容は、クラシックから、ケイジャン、ブルーグラス、アフリカン、南米音楽、ジャズまで多岐にわたっている。
オーディションでは、パフォーマンスのクオリティ、多様性、そして、公共の場に適しているかどうかということを基準として審査を行う。オーディション合格者は、このプログラムの説明を受けて、特に公共交通機関利用者の安全と快適に関して理解を求められる。