同日、在ヨルダンのシリア大使は記者会見で、この会合は実際には「シリアの友人会合」ではなく「シリアの敵国会合」だと言い、「シリアの悲劇を終了させたければ、シリア内のテロリストギャングへの武装と訓練を停止せよ」と言って出席国らを批判している。
「友人会合」の冒頭でケリー長官は、アサド政権が退陣要求をのまなければ、米国は自由のための戦いを継続するために反体制派への支援を増大することを検討するだろうと警告した。
実際に、この会合の前日にケリー長官はオマーンに行き、レイセオン社と21億ドルの契約にサインしてスティンガーミサイル(携帯式防空ミサイル)や高性能中距離空対空ミサイルなどの兵器システムを大量に購入している*3。
また、この前日の21日には、米国が直接反体制派に武器援助することを許可する法案が上院外交委員会で承認されている*4。
これは民主党のロバート・メネンデス、共和党のボブ・コーカー両議員が連名で提出した「シリアの政権移譲支援法」と題した法案で、米国がシリアの反体制派に「国防装備物品、国防サービス、および軍事訓練を提供することを承認する」ものだ。これまでの援助はサウジアラビアやカタールなど周辺国を経由して供与してきたが、これを米国から直接送ることができるようになる。
また、ヘイグ英外相は20日の記者会見で、こう発言している。「我々は(アサド)政権がジュネーブ会議で真剣に交渉しない場合、選択肢はないということを明確にしなければならない」*5
エスカレートする米欧の直接関与
この1~2カ月間でも、米欧と周辺国がシリアへの直接関与を強めていることははっきり見て取れる。平たく言うと、どの国も自国の利益が最大になる形で戦争が進行し、あるいは終結するように、目まぐるしく動き回っているようだ。
4月下旬にEUが外相会議を開催し、「反政府派を支援するためにシリアの石油禁輸措置制裁を解除する」ことを決定した。これにより、EUは反政府派が制圧する地域の石油を非常な安価で手に入れることができるようになった。
独シュピーゲル誌の5月16日の報道*6によると、禁輸の解除により最も利益を得ているのは、イスラム系反政府派アル=ヌスラ戦線をはじめとするイスラム過激派グループだ。同誌は、このアル=ヌスラ戦線は最大で日量3万バレルの原油を供給でき、超低価格で世界市場に売りさばいていると書いている。
*3=http://www.reuters.com/article/2013/05/21/us-oman-kerry-idUSBRE94J0YV20130521, http://www.reuters.com/article/2013/05/22/us-oman-kerry-idUSBRE94L09M20130522
*4=www.foreign.senate.gov/publications/download/syria-transition-support-act-of-2013(PDF)
*5=http://www.reuters.com/article/2013/05/20/us-syria-britain-idUSBRE94J0HM20130520
