SHLの活動地域は旧ユーゴのセルビア、コソボ、マケドニアの3国と、隣国アルバニア。娘はアルバニアのロマの子供を援助するプロジェクトに応募して、去年(2012年)の8月以来、単身、首都のティラナへ赴き、同地のロマ・センターで任務に就いている。
SHLは、時々セミナーを開催する。この3月初めは、セルビアのマリ・イドスという小さな町でセミナーがあり、バルカン半島に散らばっているドイツ人NGOの学生が集まることになった。娘もそれに参加しようと、セルビアに向かったらしい。
「当初の予定はこうだった。私だけが、宇宙のかなたアルバニアという遠方からの参加者だったので、長い旅程を考慮して、前日の午前6時にバスで出発(夜中のバスは避けること!)。ティラナからコソボ共和国の首都プリシュティナへ。そこから午前11時のバスに乗り継ぎ、セルビアの首都ベオグラードへ行き、ホステルで一泊。翌日は、他の土地からやって来る同僚たちと待ち合わせて、バスでノヴィ・サド経由マリ・イドスへ」
「しかし今となっては、どうにかして同僚たちに、私が明日ベオグラードにたどり着けないことを知らせなくてはならない。電池が切れかけ、チャージも尽きそうなこの携帯で。どうしよう。そうだ、簡単なことだ。ティラナまでちょっと戻って、家で携帯に充電して、チャージもすればいいんだ! 馬鹿げて聞こえるが、それが今の私に残された唯一の方法のようだ」
アルバニアからセルビアへのバス移動中に起きたトラブル
「最初の躓きは、ティラナ発、プリシュティナ行きバスの大幅な遅延。惜しくもたった8分の違いで、私はベオグラード行きのバスに乗り遅れた。次のバスは22時。エーッ、あと11時間!?(略)しかし、バスの中で知り合ったプリシュティナ出身のアルバニア系の女の子が、持ち前の親切心を十分に発揮して、なんと、まる一日中、私と共に過ごしてくれたのだ。(略)」
「まず、彼女のお気に入りのカフェに行き、それから、彼女の家で伝統的なコソボ料理をいただき、夕方にはボーイフレンドの家へ行った。そこで私はバスの発車時間まで、まさに、音楽、ビール、タバコの煙と、コソボのアルバニア人の大いなる歓待精神に包まれていた。この時点では、私は、自分がなぜかまた予想もしなかった状況に陥ってしまったことに驚きながらも、しかし、それらをすべて肯定的にとらえていた」
