4月5日に、普天間基地移設をはじめとする沖縄アメリカ軍施設に関する日米合意がなされた。それによると、在沖縄アメリカ海兵隊の普天間航空基地は辺野古へ移設され、その移設を前提として2022年度以降に普天間基地跡地が返還されることとなった。

 アメリカ軍関係の報道では「海兵隊普天間飛行場は早ければ2023年までに閉鎖され、沖縄島内の低開発地域の海岸沖飛行場に移設される」(“Stars and Stripes”、4月5日)という日程が紹介された。

 ただし、少なくとも筆者周辺の米軍関係者や研究者などでこの日米合意の日程を真に受けているものはほとんど見当たらない、というよりは、もはや日本側の“約束”にはあまり関心を示さなくなってしまっている。

普天間基地移設問題の解決は日米同盟の強化につながるのか?

 2月にアメリカで実施された安倍晋三首相とオバマ大統領との首脳会談を、安倍政権とそれに追随する多くの日本のマスコミは大成功のように宣伝し、日米同盟が復活したと自画自賛している。そして、日本の民主党政権によって暗礁に乗り上げさせられてしまった普天間基地の辺野古への移設問題こそが日米同盟にとっての最大の懸案事項であるかのように錯覚し、あたかも普天間基地移設問題をうまく処理さえすれば、尖閣諸島をはじめとする領土問題でも日米同盟が有効に機能するとでも思い込んでいるようである。

 普天間基地移設問題は確かに在沖縄アメリカ海兵隊の主要施設に関する問題であり、それをどこにどのような形で移設するかは重要な問題であることは否定できない。

 しかしながらグローバルな国防戦略の一環として日米同盟を捉えているアメリカにとって、普天間基地移設問題は戦略的根幹に関わる中心的課題というわけではない。普天間基地移設問題より深刻な戦略的課題が山積しているからである。また、アメリカ国防当局が日米同盟を維持しているのと並行して日米同盟が不調になった場合のオプションを何通りか用意しているのは、いかなる軍事戦略担当部局にとっても常識と言える。

 それに対して、日本側が普天間基地問題をまとめ上げることが日米同盟の強化と考えているようでは、日米同盟を実質的に強化させることなどできない相談である。そもそも、日米同盟を国際政治のレベル、そして軍事戦略の問題として考えているアメリカ側が、日本政府が普天間基地移設問題を国内政局あるいは地方政治の問題レベルでしか捉えられないのではないのか? という不信感を抱いても不思議ではない。

 日本側が、普天間基地移設問題を解決することによって日米同盟を強化しようというのならば、在沖縄アメリカ海兵隊をはじめとする在日米軍や自衛隊の作戦行動を飛躍的にプラスにするような新機軸の提案を日本側からアメリカ側にぶつけるくらいでなければ、「日本側は、いつまでたっても“国防戦略や東アジア戦略”といった視点で日米同盟を考えることができず、“不動産利権の問題”程度しか考えることができない」といった印象を捨てさせることができない。