近ごろアメリカ海軍・アメリカ海兵隊関係者たちとの間でしばしば話題になるのが、先の衆議院選挙における自民党の選挙公約である「自衛隊を国防軍として位置づける」という構想である。
もっとも、われわれの議論は、単に自衛隊を国防軍や防衛軍あるいは単に国軍といった名称に変更することに関する純然たる軍事的話題であって、憲法改正論議とは一線を画するものであることは言うまでもない。
自衛隊の名称変更に関するわれわれの議論の結論を述べると「自衛隊という名称を他の名称に変えるだけでは意味はなく、日本防衛にとって最低限必要な自主防衛能力を保持した精強な戦闘組織にしなければならない」ということになる。これは「自衛隊という名称を変える必要がない」というわけではなく「名称変更も強力な自主防衛能力の構築もともに必要」という趣旨である。
“Self-Defense”は個人的な自衛のニュアンス
英語圏の人々にとっては自衛隊の英語表記である“Japan Self-Defense Forces”の“直訳”は 「日本自衛軍」である。軍事的に自衛隊の“隊”という語義を生かして直訳したいならば“Japan Self-Defense Corps”といったものになるのであって、“Forces”というのは常識的には“Armed Forces”、すなわち軍隊を意味する。したがって“Self-Defense Forces”から受ける語感は「自衛隊」ではなく「自衛軍」なのである。ただし、われわれが問題にしているのは“Forces”ではなく、“Self-Defense”の部分である。
日本での論調の中には、“Self-Defense Forces”と“Defense Forces”という英語表現を、ほとんど同じと見なすものが少なくないようであるが、英語圏では通常“self-defense”という言葉は個人的な自衛という状況で用いられることがほとんどである。
例えば昨年末に発生したコネチカットの小学校での銃乱射事件以来アメリカで議論が沸騰している銃規制問題などにおいても、悪人から自分自身そして自分の家族を護る、すなわち“self-defense”の問題が議論の焦点の1つとなっている。同時に、アメリカで通常“self-defense”というと、この種の自己防衛のための銃の使用や、空手や合気道やテコンドなどを応用した護身術といった、個人的な自衛を連想される。