経営力がまぶしい日本の市町村50選(9)
山形県金山町が育てている金山杉がいかに貴重な日本の資源であるかは、建築研究所主幹で筑波大学教授の岩田司さんへのインタビュー記事『住宅産業で世界一になれる日本の実力、その理由』を読んでいただいた方にはお分かりいただけたと思う。
しかし、金山杉が大きな資産価値を生んでいるのは、単に金山町の気候が杉の育成に向いていたからだけではない。江戸時代以前から連綿と続く森を守り生かす「経営」があってこそなのだ。
今回は金山町の経営力をたっぷりお伝えしたい。戦後安い外国産の木材が入ってきても怯むことなく林業を守り続ける一方、中央集権を進め近隣市町村との合併を促す日本政府の方針にもノーを突きつけてきた。
現在、鈴木洋町長の下で徹底した合理化を進めている。借金はどんどん減り、一方で若い人たちが住みやすい環境を整えるための投資は惜しまない。またそのお金の使い方もうまい。1の投資で100の効果を生み出しているのだ。
霞が関のお役人にはぜひ金山町を見に来てほしいと思う。
江戸時代から守り続けた山が育んだ「金山杉」ブランド
川嶋 金山町には樹齢100~200年というような古い杉が数多く残っているそうですね。
鈴木 「大美輪の大杉」は樹齢250~300年と言われ、江戸時代の宝暦年間に植林されたものです。最も太いものは根元で5メートルくらいあり、樹高の一番高いものは59メートルで、日本一の高さです。
川嶋 江戸時代に植林されたものだというのは驚きですね。
鈴木 なぜ植林と分かるかというと、きちんと枝打ちされているからです。外の枝を残して、内側の枝を切っている。ですから節のない、いい材ができるんです。
それとこの地域は夏は高温多湿、冬は豪雪ですが、それが杉の生育環境としてはとてもいい。南の杉に比べ成長度合いは早くはないですが、春夏秋冬のすべての季節を杉が感じて成長するので、非常に良質の木になるんです。