肌に鋭く刺さってくるような冷たい海風が、どこまでも清涼だ。

 精力的に街を往く人々が身にまとう色とりどりの防寒着を眺めながら、この国の人々の強烈な色彩感覚と感情のカラフルさの相関関係について考えてみたりする。

 この年末年始、僕は釜山にいた。年がら年中暖かい日が続くロサンゼルスから、いっきに零下5度の世界だ。12月生まれで寒さには強いはずの僕もこれには弱った。

 弱ったからまた強くなるために釜山の美味い物を食べまくった。海鮮鍋、参鶏湯、「オマクジプ」や「オバルタン」のホルモン、釜山名物テジクッパ・・・。だめ押しにいつもの5倍ほどのビタミンCタブレットを韓国ビール「Cass」で胃袋に流し込んだら、体調はあっというまに快復した。

上:釜山港にて 下:ホンソチョッパルの豚足(筆者撮影、以下同)

 ところで今回の釜山、最高の発見は「豚足」だった。

 日本でも焼肉店から韓国家庭料理店まで、いろいろな豚足を食べてきた。しかしこの「ホンソチョッパル」の豚足ほど美味しいものは食べたことがない。

 わさび醤油や味噌をつけて、時にはサンチュに巻いて食べる。口の中でとろける一歩手前の適度な歯ごたえも楽しめる。

 コラーゲンもたっぷりで女性にもおすすめだ。実際僕の肌もつるつるになり、翌日街を歩けばジャガルチ市場の魚屋のアジュンマ(おばちゃん)から呼びかけられる声も以前は「アジョシ(おじさん)」だったのが、ばっちり「オッパ(おにいさん)」に変わっていた。

 ところでこの「ホンソチョッパル」のオーナーはなんとパリでフランス料理を勉強していたのだそうだ。釜山に帰郷し、華麗なる転身の末オープンしたこの豚足専門店。もちろんインターネットで検索すれば日本のサイトでも紹介されている、平日でも行列のできる大人気店となっているのだ。

 食のコリアン=フレンチ・コネクション。

 僕も昨年の夏、フランスの中の韓国を探してパリを歩いていた。モンパルナスの小さなホテルを拠点にし、5週間にわたってパリで活躍するコリアンたちに会って話を聞き、人気韓国料理店を食べ歩いたのだった。

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 2012年6月24日。LCC(格安航空会社)のブエリング(vueling)航空に乗ってローマを発った僕はパリのオルリー空港に到着した。わずか数時間の快適な、なんといっても経済的な空の旅だった。

 ちなみにこのブエリングはスペインの格安航空会社。欧州各国ではこのような格安航空会社がいくつもあって、各種キャンペーンなどに合わせて航空券を買えば、価格的にはほとんど列車に乗るような気軽さで飛行機に乗れる。

 欧州の学生たちはこのような格安航空会社をうまく利用している。長期休みになれば多くの学生が国外に飛び出し、外国を旅してまわるのである。