2013年1月、ウクライナはハンガリー国境経由でヨーロッパから大規模な天然ガス輸入を始めた。ヨーロッパからの輸入は昨年11月から開始されているが、本年はさらに年最大50億立方メートル(ウクライナの総消費量の約1割弱に相当)まで拡大する計画となっている。
ガス自給率の低いウクライナにとり、輸入供給源多元化の実現は、長きにわたるガスプロム独占を突き崩すものであり、安全保障のみならず価格の面でもメリットは大きい。
契約の詳細
12月末までの2カ月間、ドイツ・RWE社は、ウクライナ国営ガス・石油企業ナフトガス・ウクライナ社との契約に基づきRWEは5.6億立方メートルのガスをポーランド経由でウクライナに供給した。
本契約に付随してガスパイプライン会社、ポーランド側Gaz-System社・ウクライナ側Ukrtransgas社間で輸送契約が締結され、両国内のガス中継基地ヘルマノヴッチ(Hermanowice)・ドロズドヴィッチ(Drozdovychi; Дроздовичі)間のパイプライン(DN500規格)を従来とは逆方向(リバース)、すなわちポーランドからウクライナ方向へ輸送された。
11月開始は、ガス需要とガス価格がピークになる冬季に対応したものであり、これらガスは熱供給炉の消費に回されたと説明されている。
2013年1月からは、同じくRWE社がハンガリー・ウクライナ国境経由でウクライナに50億立方メートルのガスを供給する予定である。
ボイコ・ウクライナ副首相によれば「ウクライナがロシアから輸入するより40~70ドル安い」とのことで、2012年度のガスプロムのウクライナ向け価格(100ドル値引き適用後の価格、年平均424ドル、第1四半期416ドル、第2四半期425ドル、第3四半期426ドル、第4四半期430ドル)から判断すると、 RWEの供給価格は1000立方メートル当たり350~400ドルと見られる。
ガス自体は、RWEがガスプロムから購入したものをウクライナに転売する形となる。
問題の背景
同じガスプロムのガスにもかかわらず、ウクライナが直接購入する方が、ヨーロッパの諸企業が買い付ける価格よりはるかに高いことが問題の背景にある。しかし、ウクライナのガス輸入は、現状ではガスプロムの独占状態にある。
独占の弊害は、天然ガス戦争後に結ばれた諸契約に表れており、特に2009年1月契約で、ウクライナは油価に連動した価格の受け入れを余儀なくされている。
近年、油価の高止まりが続く一方でヨーロッパの天然ガス市場は、スポットに押され価格が下落しているため、1000立方メートル当たり100ドル値引きを以てしても、ウクライナの購入価格はヨーロッパより高い、という状況が続いている。