クレイグ・カルフィー。自転車乗りなら、一度は、その名を耳にしたことがある著名フレームビルダーだ。
(画像提供・Bamboosero、以下同)ガーナの竹フレーム製作グループ(中央の黒いシャツがカルフィー氏 2010年4月)技術を身につけたいと意欲満々のガーナの人たち
米国人として初めてツール・ド・フランスを制したグレッグ・レモン選手は、1990年のツールで3度目の総合優勝を果たした。その時、最終ステージを走行するレモン選手の姿を追ったCNNに映し出された自転車こそ、カルフィー氏が製作したカーボンファイバーフレームの自転車だった。
「カルフィー」は、アルミよりも軽く強いカーボンフレームのフロンティアとして名を馳せ、ロードレーサーにとって憧れのフレームになった。カリフォルニア州サンタクルスに本拠を置く「カルフィーデザイン」社のフレームは、100万円近くするような高級機種ばかりだ。
そのカルフィー氏が、2008年からガーナやザンビアなどの発展途上国で竹製の自転車フレームを製作するプロジェクト「バンブーゼロ=Bamboosero」に取り組んでいる。「ero」はスペイン語の接尾辞で「~する人たち」の意味。つまり、「竹でモノ作りする仲間」。
現在、本拠のサンタクルーズ(従業員3名)をはじめ、ガーナ共和国、ザンビア、ウガンダ、フィリピンなど(従業員25名)での竹製自転車の製作技術指導と現地での起業支援をしている。竹は乾燥した地域にも自生し、成長が早く、伐採してもすぐに再生するので、途上国が輸入に頼らず原料を調達できるのが強み。また、素材としても、強さがあり、振動の吸収力が高く、乗り心地も快適だ。新たな産業を切り拓くものとして注目されている。
愛犬ルナがヒントをくれた
実は、カルフィー氏が竹の自転車を初めて製作したのは1995年に遡る。
当時、飼っていた愛犬のルナ(ピットブルとラブラドールとの雑種)は、何にでもすぐに齧りつき、食いちぎってしまうイタズラ盛り。ところが、そのルナが竹には全く歯が立たないのを見て「もしかして、素材として使えるかも」と思い立ったという。
ちょうどその頃、ラスベガスで開催される自転車業界最大の見本市を目前にしていた。カルフィー氏は何とか観客の注目を集めたいと竹フレーム自転車を製作して出品したところ、見本市でメディアと入場客の注目をさらった。
カルフィー氏によると、竹は自転車にうってつけの素材で、鉄やアルミなどの金属製のフレームよりも丈夫で軽く、路面の振動をはるかによく吸収するという。さらに、耐久性も高く、いつでも入手できる、伐採すると余計に生長スピードが速くなるので環境を破壊することもない。エコ志向のサイクリストにもアピールできると考えたそうだ。