民主党のみならず、日本の再生を託された菅直人新政権が発足した。草の根政治家を標榜し理想の政策を掲げて国民の期待を集める政治手法は、オバマ米大統領に相通ずるものがある。ただ成長と財政再建を両立させる経済政策の運営では、オバマノミクスはお手本にはなりそうもない。
非政治エリートから這い上がった人
「草の根から生まれた政治家なので草の根政治」。菅首相は2010年6月8日の就任記者会見で、新政権のキーワードを問われてこう語った。
2世政治家が続いた日本で、菅首相は久々の非政治エリートだ。サラリーマンの息子に生まれた菅氏は、市民運動や婦人運動家の故市川房枝氏の選挙陣営入りをきっかけに政治を志した。
1980年の衆院選で初当選するまで、衆参合わせて3度落選している。政治資金は1000万円余りで、その大半が個人献金だ。経済界との接点はほとんどないとされる。選挙に必要な地盤、看板、鞄の3点セットを親から受け継ぐ2世政治家とは全く異なる苦労人だ。
一方、黒人の父と白人の母の間に生まれたオバマ大統領は、青年時代にシカゴで貧しい人々の生活向上を支援するコミュニティオーガナイザーと呼ばれる教会活動に従事した。その後イリノイ州議会の上院議員に出馬、演説のうまさを武器に選挙戦を勝ち抜いて政界デビューした。
2008年の大統領選では「変革」を訴えて立候補。共感した老若男女がボランティアで参加するグラスルーツ(草の根)選挙運動が全米各地でわき起こり、地滑り的勝利の原動力となったのは記憶に新しい。
社会保障向上、雇用増、所得増──バラ色の「第3の道」
菅、オバマ両氏は、財政再建と景気刺激を両立させようとする経済政策の方向性も似通っている。菅首相の「第3の道」政策と、オバマ大統領の「スマートガバメント(賢い政府)」だ。