一色 また、中国にとって最大の目的はおそらく日韓が不仲になることです。日韓が手を組んで立ち向かってきた場合に一番困るのは中国ですから。今回の放火犯も、日韓の仲を悪くするためにやったら思いのほか効果があったというのが本音ではないでしょうか。
ですから今後は、日本がどうするのかが重要になってきます。型通り遺憾の意だけを表明するのか、あるいは日本側も「竹島の日」式典の開催を決行したり、国際司法裁判所への提訴に踏み切るのか。そうした具体的な対応が求められます。
中山 韓国では大統領選で朴槿恵氏が勝利を収め、2月に新政権が発足しますが、日本にとってどんな影響があると思いますか。
一色 過大な期待はしない方がいいでしょう。李明博大統領も大阪出身ということで一時は親日だと期待されましたが、結局あの国では反日を掲げなければ政治生命が失われてしまいます。だから、誰が大統領になっても基本的には変わらないはずです。
外国を訪れて知った、“教科書では教わらない”日本の姿
中山 一色さんは在職中、外国の方と接する機会も多かったと思いますが、そこでどんなことを学びましたか。
一色 20代前半の頃は外国航路の船に乗り、色々な国を訪れましたが、例えば外国へ行った時に、日本について質問されても答えられなければ困ります。
いくら英語や外国語が話せても、自分の国を説明できなければ言葉以前の問題なんです。小学校から英語を学ぶのも一つの方法かもしれませんが、まずは日本がどういう国なのかを他国に説明できなければ話にならないと思います。
中山 外国での思い出深いエピソードがあればお聞かせください。
一色 私自身はもともと共産主義的な考えだったため、人類が皆平等で、国境もなくなって世界が平和になればいいと思っていました。しかし、色々な国を訪れるうちに現実はそんなものではないと知ったのです。
学校教育では日本が悪い国だと教えられましたが、例えばインドネシアへ行くと「第2次世界大戦後のインドネシア独立戦争の時、何百人もの日本兵がここに残ってオランダと戦ってくれた」という話をされる。
そんなことは教科書で教わらなかったわけです。色々とそうした話を聞くうちに、日本が極悪非道な国家ではないと気づくようになった体験は大きかったです。
外国に出ることが全てではないですが、日本の中にいると外が見えないですよね。以前アラブ人と話した時に「なぜ日本はあんなに米国にペコペコするのか。日本は日露戦争にも勝利したじゃないか」と言われ、改めてハッとさせられました。
東南アジアの国を訪れると「旧日本軍がいたころは良かった」と話す人もけっこういるんですよ。もちろん全てにおいて日本が良かったとは言いませんが、このように両方の意見が存在しますから、一方に偏らずどちらにも耳を傾けることが大事だと思います。