週刊NY生活 2013年1月1日第425号

 ハワイで30年の歴史を持つ製麺会社サン・ヌードルが昨年8月、ニュージャージー州ティターボロに工場を構え、生麺の出荷を開始した。

 創業2代目の夘木健士郎さん(26)と二人三脚で、ラーメンの研究開発を一緒に手掛けるのは、日本一のラーメン店に20代の若さで選ばれたカリスマ店主、ラーメンラボ代表の中村栄利さん(35)だ。

工場建物内にあるラーメンラボのキッチンで、生麺の研究に励む健士郎さん(右)と中村さん

 同工場では、ラーメン、そば、うどんなど20種類の麺を店主の希望に応じた太さに裁断して1日8000食余りを出荷している。

 ニューヨークでは今、ラーメンブームといわれる。日本人以外のオーナーシェフが続々と創作ラーメンの店を開店させている。

 彼らにラーメンの極意と真髄を伝授するためのラーメンラボのキッチンも設置されている。

 サン・ヌードルでは、奇をてらわずによりトラディショナルでシンプルな麺づくりを心掛けているという。小麦の品質からグルテンの配合までゼネラルマネージャーとして現地責任者を務める健士郎さんが中村さんと共に日夜顕微鏡を覗きながら研究を続け、中村さんがプロデュースして世に送り出している。

 現在同社の工場はハワイのホノルル、ロサンゼルスとこのニュージャージー工場があるが、西海岸では輸送上の理由で冷凍麺が主体だが「ニューヨークはアメリカの食文化の中心であり、食に興味のある消費者が多いので生麺の旨さをぜひ届けたい」という健士郎さんの強い熱意から東海岸工場進出を決めたという。

 カリスマシェフの中村さんは、コンサルティングやレシピ研究開発など、レストラン経営者を教育して、あらゆる分野の料理にラーメンを取り入れたメニューを提案するいわば「ラーメンの伝道師」。

 今は基本的に自分の店は共に運営してきたパートナーに託し、家族を連れてアメリカに住み、健士郎さんとタッグを組む。

 「いいものを供給することにこだわることは、日本のいいとところ。ただし、お客さんが求めるものだけを作るのではなく、自分たちのこだわりもどんどん自由に表現していきたい。今のラーメンブームに乗っかるより、よりもっと激しいブームを作っていこうとふたりで言っているんですよ。いずれブームはスタンダードになりますから。そこまで突っ走っていきたいですね」と話す。

 日本人の国民食となったラーメンが世界の国民食となる日はもうそこまできているようだ。

(三浦良一記者、写真も)

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