Sell in May and go away 「株は5月には手仕舞え」と言う。米国ではよく知られた相場格言だ。
なぜ5月なのか──。米国の確定申告は毎年2月から始まり4月15日に終了する。納め過ぎた税金の還付は3月中旬頃から5月中旬にかけて実施される。
還付金はミューチュアルファンド(会社型の株式投信)の購入に当てられる場合が多く、この時期、米国株式市場の需給関係は良好。そうした需給がタイトなうちに、まずは売っておけというわけだ。
今年ほどこの格言が「ハマった」年は珍しい。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は5月月間で7.9%下落、5月の下落率としては第2次世界大戦後で最大となった。振り返ってみれば日米の株式市場は4月までは絶好調だったのに、なんで、こんなに様変わりの展開になってしまったのだろうか。
くすぶり続けるギリシャ、スペインのソブリンリスク
その要因として誰でも思いつくのは、ソブリンリスク問題だ。5月の欧州はギリシャの財政破綻を巡って、てんやわんやの大騒ぎ。最近では、ついに恐れていたスペインへも飛び火しつつある。
かねて投機筋の間では、サブプライムローン問題の際の投資銀行になぞらえて「ギリシャはベア・スターンズ、助けようと思えば助けられる。スペインはAIG、大きすぎて潰せない」と語られてきた。
スペイン議会が5月27日に追加の歳出削減法案を可決したことで、公務員組合の怒りに火がつき、8日には公務員がストを行われた。南欧のソブリンリスクは、再びヤマ場を迎えることになりそうだ。
とはいえ、この問題は今に始まったことではない。ギリシャのインチキ(財政赤字額を過小に偽装)が明らかになってからかなりの時間が経っており、市場には既に織り込みずみだ。2010年4月13日にギリシャの公的債務管理庁が実施した短期国債の入札に対する需要はそこそこのレベルで、無事に資金調達することができた。その2日前に欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が450億ユーロの支援を決めていたからである。
GS公聴会で「明日は我が身」と震え上がった投機筋
それなのに、この問題が燎原の火のように燃え盛り、最終的にEUとIMFが総額7500億ユーロの安定化基金創設に追い込まれたのは周知の通り。4月中旬を境に雰囲気が一変してしまったわけで、その時期に何があったのかを振り返れば、事の本質が見えてくる。