韓国の大統領選挙(2012年12月19日投開票)は与党候補の朴槿恵(パク・クネ)候補の圧勝で終わった。
激しい選挙戦の最大の受益者が1年前に開局したばかりの新しいテレビ4局だった。連日、選挙特別放送を編成し、視聴率と認知度を上昇させた。保守層の結束にもつながったという指摘もある。
李明博(イ・ミョンバク)政権は発足直後から「メディア改革」政策を掲げ、その目玉としてCATV向けの「総合編成チャンネル」という4つの新しいテレビ局の開設を認めた。
4局は、JTBC(大株主・中央日報)、朝鮮TV(同朝鮮日報)、チャンネルA(同東亜日報)、MBN(同毎日経済新聞)だ。
強行採決の末に認可されたが、当初は惨憺たるスタート
韓国では、大新聞社と大手テレビ局の兼業を厳しく禁じていたが、李明博政権は大幅な規制緩和で新しいテレビ局を開局させた。野党は、保守的な色彩の強い大手新聞社がテレビ局まで経営することに強く反対したが、政権与党は国会の強行採決でこれを押し切った。
2011年12月1日に4局は開局したが、スタートは惨憺たるものだった。韓国ではCATVの世帯加入比率が80%以上で、4局は「地上波放送に対抗できるような影響力を持つ」とさえ言われた。
だが、ふたを開けてみると、番組作成の経験不足や資金面での制約、一般国民の間での知名度が低かったことなどで視聴率は低迷を続けた。
「1日平均視聴率」は、当面の目標だった1%どころか、0.5%にも達しない状態が続いた。各局とも、有名タレントを起用した「大作ドラマ」などを放送したが、視聴率はいっこうに上がらなかった。
JTBCが「サッカーワールドカップ最終予選・韓国-レバノン戦」を放送した際の7.5%が突出した視聴率というありさまで、開局から6カ月経った時点では「4社が生き残るのは難しい。再編は必至」という声が早くもメディア関係者の間から上がっていた。
ところが、大統領選挙が過熱したために状況が一変した。韓国選手が快進撃を続けたロンドン夏季五輪が終わり、安哲秀(アン・チョルス)氏が出馬に名乗りを上げた夏過ぎから一般国民の間でも大統領選挙に対する関心が徐々に高まった。
これを機に、4局も番組編成方針を徐々に「大統領選挙シフト」し始めた。