2013年2月25日、韓国の新しい大統領に朴槿恵(パク・クネ)氏が就任する。韓国初の女性大統領が掲げる経済政策は「クネノミクス」と呼ばれ、経済界などでその中身に関心が高まっている。
成長志向一本やりだった歴代の大統領の経済政策とはがらりと内容が変わったが、就任早々、難題も山積している。
大統領選の2日後にスピード出版された注文殺到の新著
朴槿恵氏が大統領選挙で当選したのが2012年12月19日の水曜日。このわずか2日後の21日金曜日に1冊の本が韓国で出版されて注目を集めた。
題名は『クネノミクス』(毎日経済新聞社刊)。朴槿恵氏の経済政策について解説した230ページの本だ。「スピード」が身上である韓国を象徴するような出版だが、発売と同時に「企業からまとめ買いなどの注文が殺到した」という。
「アベノミクス」は日本だけでなく今や世界中で関心を集めている。安倍晋三首相の経済政策やこれまでの経済に対する発言を集め、「アベノミクス」について論じた本が首相就任からわずか2日後に出版されるなど日本では考えられない。
このスピード感の差は、如何ともしがたいのだろうか。
2013年1月15日、李明博(イ・ミョンバク)政権から朴槿恵政権への移行を円滑に進めるための「大統領職引き継ぎ委員会」は、新政権での政府組織改革案を発表した。韓国では政権が代わるたびに政府組織が少しずつ変化する。組織がどう変わるかで新しい大統領が重視する政策を読み取ることができる。
政府組織の変更から読み取れる政策
今回の組織改革の主な内容は(1)経済副首相の復活、(2)未来創造科学部の新設、(3)海洋水産部の復活、(4)通商業務を外交通商部から切り離し、産業政策の立案遂行を担当する「産業通商資源部」を新設する――などだ。
朴槿恵氏が大統領選挙期間中から最も重視していたのが「経済政策」だ。副首相が大統領の意を受けて各省(部)庁間の利害を調整しながら指導力を発揮して政策を進めようという狙いだ。