週刊NY生活 2012年12月1日第422号

 衆議院総選挙が日本で12月4日(火)に公示され、日本国内では16日(日)に投票となるが、在外選挙は、公示翌日の5日から開始される。

 2010年の参議院選挙以来2年ぶりの国政選挙となる。海外からの声、在外選挙の抱えている問題。海外からでないと日本に伝わらない問題などについて本紙は11月26日、ニューヨーク生活プレス社で緊急在外選挙座談会を行った(座談会の内容4、5面に掲載、週刊NY生活TVで動画)。

在外選挙について意見を出し合う左から竹永、竹田、武末の各氏と司会・三浦

 出席者には元・海外有権者ネットワークNY代表の竹永浩之さん、NY日系人会副会長で現海外有権者ネットワークNY代表の竹田勝男さん、ジャーナリストの武末幸繁さんに集まってもらった。

 前回の参院選では当時の海外有権者が85万人といわれるなか、2万8000人しか投票していない。投票率は2%から3%と低迷した理由について、3氏からそれぞれの分析で意見が出された。

 竹永氏は、制度上の問題と海外有権者側の問題を指摘し、竹田氏は、とりわけ在外公館投票できない遠隔地の居住者の郵便投票の不便さの改善を訴えた。

 武末氏は「ネット選挙ということでは日本はほぼ完全禁止で、公示日以降は立候補者はメールはもちろんブログの更新、ツイッターさえできない」との現状を指摘、戸籍制度のない米国における投票実態を紹介して投票の簡略化を求めた。

 また、座談会では、日本の国政に海外の声を届かせるためには、海外在住者の代表、海外在住者の代弁者となる議員を国会に送り込まなくてはならないとの発言もあり、そのための海外特別区の創設なども将来は必要との見方も示された。

 現在海外には118万人の日本人が住んでおり、推定有権者数は88万7000人と言われる。今年8月に総務省が実施した調査で選挙人登録者数は10万6000人で、海外有権者全体の12%。

 これを多いと見るか少ないと見るかは見解の分かれるところだ。ニューヨーク日本総領事館管轄では5221人が登録している。

 1票の格差が問われるいま、海外80余万票の抱える問題とその具体的な改善点を海外からの視点で討論してもらった。

出席者プロフィール(発言順)

■竹永浩之=熊本県八代市出身。琉球大学海洋学科中退後、沖縄で素潜り漁師。その後アジアを放浪して92年NYに。93年10月から在外選挙制度実現の運動を開始。98年4月に同法案が成立。元・海外有権者ネットワークNY代表。新聞社勤務を経て、現在男児2人を育てる「主夫」。NY日系人会の育児グループ「アップルキッズ」世話人。

■武末幸繁=福岡県大牟田市出身。法政大学社会学部卒業後、雑誌編集者などを経て88年来米。90年より邦字誌OCSニュースの編集記者、後に編集長となる。同誌休刊に伴い05年に独立。現在、ワシントンDCの邦字紙CAPITALの編集長を務める傍ら週刊NY生活や日本のSAPIO、週刊ポストなどで取材・執筆をしている。法政大学校友会NY支部会長。

■竹田勝男=北海道出身。札幌南高、セントラルワシントン大学、サンダーバード大学院卒業。極光水産、シティバンクを経て、現在メリルリンチのバイスプレジデント。北海道ゆかりの会代表幹事、全国県人会事務局、NY日系人会副会長。海外有権者ネットワークNY代表。

■司会・三浦良一 週刊NY生活 発行人