アメリカ連邦議会で審議中の「2013年度 国防権限法」に、ウェッブ上院議員(注)が中心となってマケイン上院議員、インホッフ上院議員、リーバーマン上院議員らと提議した「尖閣諸島を巡る状況に関する補足 第1246条」が、11月29日に全会一致で可決された。
この条項を一言で言うならば、これまでしばしばアメリカ政府高官(例えばクリントン国務長官やパネッタ国防長官)が公言している「尖閣諸島の領有権に関しては中立的立場を維持するが、尖閣諸島が日本の施政下にあることは認めている」というアメリカ政府の立場を、アメリカ連邦議会でも明確に宣言するという趣旨である。
(注)ウェッブ上院議員は海軍兵学校を卒業し、アメリカ海兵隊に入隊。海兵隊将校としてベトナム戦争に参加し、数々の勲功を挙げ、「Navy Cross」を含む6個の勲章を授与された。ベトナム戦争後、法律家に転身して連邦議会や連邦政府の仕事に就き、1987年にはレーガン政権下で海軍長官(アメリカ海軍とアメリカ海兵隊を統括する海軍省のトップでシビリアンのポスト)を務めた。上院では、軍事委員会(人事小委員会委員長)や外交委員会(東アジア・太平洋地域小委員会委員長)などを兼任してきた。今期で上院議員を引退する。
「尖閣諸島は日本の施政下」「日米安保条約第5条の規定を再確認」と記述
条項は下記のような内容であり、7項目から構成されている。
【第1246条:尖閣諸島情勢に対するアメリカ合衆国上院の意見】
アメリカ合衆国上院の意見は下記の通り:
(1)東シナ海は、アジア太平洋地域の全ての諸国家に利益をもたらす重要な海上航路帯・通商路を有するアジアの“共有の海”の一部である。
(2)東シナ海における領有権ならびに管轄権に関する紛争の平和的解決は、紛争を複雑にする、あるいは増長したり地域を不安定にする様々な行動に関与する全ての当事国の自制に基づいた行動が要求されている。そして相違点は、普遍的に認められている慣習国際法の原則に従った建設的方法で処理されるべきである。
(3)アメリカ合衆国は、尖閣諸島の究極的領有権に関しては立場を明確にはしないが、尖閣諸島が日本の施政下にあることは認めている。
(4)第三国による一方的な行動は、尖閣諸島が日本の施政下にあるというアメリカ合衆国の認識になんらの影響も与えない。