東京国際フォーラムで10月30日と31日に開かれたデジタルマーケティングの国際カンファレンス「ad:tech Tokyo 2012(アドテック東京)」。

 基調講演リポート最終回は、今回のカンファレンスの最後を飾った、宮坂学ヤフー社長の「『BAKUSOKU』が変える日本のデジタルマーケティング」をご紹介する。

「第2の創業」を「爆速」で進める

ヤフーの宮坂学社長(撮影:前田せいめい、以下同)

 「爆速」と大きく書かれた赤いTシャツを着て登壇した宮坂社長は、ヤフージャパンは第2の創業に入ったと述べ、猛スピードで変化していかなければならないと力強く語った。

 ヤフーは今年4月、新体制に移行した。すべての常勤役員、また執行役員8人のうち7人が交代、平均年齢が10歳若返った。創業16年、「パソコンインターネット大陸」の世界では一定の地位を築いたヤフーが、今なぜ大きな混乱とリスクの中で会社をつくり変えようとしているのか。それは2007年のアイフォーン登場によって経営環境が激変したからだ。

 スマートフォンの利用者が急増し、2011年にはスマホの出荷台数がフィーチャーフォンを超えた。同社においても12年3月にスマホのページビュー(PV)がフィーチャーフォンのそれを抜いた。宮坂社長は「このままいくと数年以内にスマートフォンのPVがパソコンのPVを超えるだろう」とし、「我々はパソコンインターネットの会社から、スマートフォンインターネットの会社にシフトしなければいけない」とした。

 そこで打ち出したのが「スマートフォン・ファースト、パソコン・セカンド」だ。これまではスマホとパソコン(フィーチャーフォンを含む)のバランスを取って事業を行ってきたが、宮坂社長は「こういう歴史的転換点ではアンバランスにならなければいけない。最優先はスマートフォン、余力があればパソコンをやろうというくらいに大きく舵を切ろうとしている」と語り、「スマートフォンを制する企業がインターネットのリーダーシップを取ることは確実」と断言した。

 一方、第2の創業で変わらないこともあるという。創業以来の「ユーザー・ファースト」と、人々や社会、企業といったあらゆる対象の課題を情報技術で解決していく「課題解決エンジン」というコーポレートスローガンは、「これからもずっと変わることはない」と宮坂社長は述べた。

「間違ってもいいから決定し、実行せよ」爆速的な経営サイクルを目指す

 ヤフーがこれから主戦場と位置づける「スマートインターネット大陸」。そこを「旅する」のに組織として必要なもの、それが「爆速」というキーワードだという。

 スマホはパソコンに比べ「圧倒的に未知数」であり、「何をすればどうなるかよく分からない」。だから歩きながら考える必要があるという。そして瞬時に判断する。「いちいち上に聞いているヒマはない」というわけだ。