マット安川 今回のゲストは経済学博士の小山和伸さん。テーマは米大統領選&中国共産党大会を経て、日米中の関係がどうなっていくのか。各国が抱える経済や社会の問題点を解説いただきました。

失業率は多少改善したものの、米国経済は先行き不透明。

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小山和伸/前田せいめい撮影小山 和伸(おやま・かずのぶ)氏
神奈川大学経済学部教授。経済学博士(東京大学)。横浜国立大学経営学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専門分野は、経営管理論、組織論、戦略論、技術経営論。著書に『救国の戦略』(展転社)、『戦略がなくなる日』(主婦の友新書)など。 (撮影:前田せいめい、以下同)

小山 米国の大統領選でオバマ大統領が再選されましたが、米メディアが今盛んに報じているのは、いわゆる「財政の崖」という大きな衝撃が来年早々に来るということです。

 ブッシュ政権以来の減税策が今年末で期限切れになります。つまりは実質的な増税です。それと同時に来年1月から強制的に緊縮財政になります。そうすると当然、景気は崖から落ちるように低下するんじゃないかということが懸念されているわけです。

 失業率は一番悪かった時は9.6%ありましたが、最近になって7.9%と、微妙な数字ですが下がった。それでオバマ大統領は少し人気を取り戻したようですが、一時的に失業率が下がっただけで、経済のファンダメンタルは回復していない。

 米国経済の根本的な問題は、産業の足腰が弱っていることです。例えば、ものづくりの牙城とも言える自動車。

 オバマ大統領は経営破綻したGM(ゼネラル・モーターズ)を大規模な資金援助で助けました。しかし、それでGMのものづくりは効率性を取り戻したかというと、取り戻していません。米国はそうした経済の劣勢をマネー経済で長いあいだ取り返してきたわけです。

中国の科学的発展は不可能。理論で社会は変えられない

 中国では胡錦濤(国家主席)氏が提唱してきた「科学的発展観」が、今回の共産党大会で毛沢東思想や鄧小平理論と同じ「重要思想」として位置づけられました。

 これは共産主義の1つの特徴だと思うんですが、非常に教条的で、まず理論ありきです。理論から世の中をつくろうという考え方。理論があれば世の中ができる、だから理論を変えれば世の中も変わるという。

 中国が発展してきたのは、我われの重要思想が正しかったから。今は科学的発展と言いさえすれば発展していくと。しかし、理論というのは現実を説明するための道具で、現実をつくるためのものではない。

 もちろん、規範分析という世の中をどうつくっていくかに対して言及する理論もありますが、言ったとおりになるという保証はない。ですから中国の科学的発展なんてムリだと思います。