韓国の大統領選挙(2012年12月19日)の投開票まであと1カ月。与野党と無所属3候補が激しい選挙戦を演じているが、大混戦の割には盛り上がりに欠ける。選挙戦の最大の争点は「経済」だが、どの候補の政策も「雇用拡大最優先」「経済民主化」で似通っていることもその理由だ。
韓国は大統領の強力なリーダーシップの下で世界に類を見ない高度経済成長を実現させたというが、その実態はどうだったのか。韓国の有権者は歴代大統領の実績と比較しながら次期大統領の条件をどう考えているのか――。
「大統領の経済学」に見る評価
これらを考えるための格好の新刊が韓国で10月に発売になった。タイトルは「大統領の経済学」。大手紙「中央日報」の経済記者出身で、ワシントン特派員、日本総局長、編集局長なども歴任した李璋圭(イ・ジャンギュ)西江大学教授が執筆した。
500ページを超える大著を読みながら、韓国大統領とリーダーシップ、経済政策について考えてみた。
韓国の歴代大統領は、以下の通りだ。ほとんどの大統領は日本でも深いなじみがあるだろう。
▽韓国の歴代大統領
1948年-60年 李承晩
1960年-62年 尹潽善
(議院内閣制で60-61年の実権は張勉首相、61年の軍事クーデターで憲法停止)
1962年-79年 朴正煕
1979年-80年 崔圭夏
(79年の朴正煕大統領死去で就任)
1980年-88年 全斗煥
1988年-93年 盧泰愚
1993年-98年 金泳三
1998年-2003年 金大中
2003年-08年 盧武鉉
2008年-13年 李明博
実権がなかった尹潽善(ユン・ボソン)、崔圭夏(チェ・ギュハ)両元大統領を除く8人(現職を含む)の経済政策と実績に対する一般的な評価はどうか。
評価が高いのは朴正煕(パク・チョンヒ)、金大中(キム・デジュン)両氏だろう。
朴正煕氏は1961年に軍事クーデターで政権を握って以来、安保と経済を2大重要課題として掲げ、それを実現した。
在任期間中に「漢江の奇跡」と呼ばれた超高度経済成長を実現させた。