ソウル南部の江南駅から乗ったバスは高速道路をびゅんびゅんと飛ばして走る。40分も過ぎると目の前に突然、高層ビルとぴかぴかのマンション(韓国ではアパートという)群が広がる。ごみ一つ落ちていない新都市だ。
不動産バブル崩壊で売買価格が低迷している韓国の不動産市場だが、いま、唯一、猛烈なペースでアパートが売れているのが、仁川国際空港からすぐ近くの松島(ソンド)新都市(正式名称は松島国際都市)だ。
「環境分野の世界銀行」の本拠となるぴかぴかの新都市
松島新都市の中心部である地下鉄「セントラルパーク駅」。名前は立派だが、セントラルパークといっても造成中で、まだだだっ広い空き地という感じだ。
駅の真上にはできたばかりのポスコの高層ビルがあるが、昼食時間だというのに駅前には人の往来はほとんどない。
それはそうだ。飲食店やコンビニなど人が集まりそうな場所がまったくないからだ。あちこちに工事現場があり、まさに新都市建設中だ。
偶然通りかかった2人連れの女性に聞いてみた。「いつもこんなに静かなのですか?」。返ってきた答えは「そこのビルで働いていますが、まだ周りに何もないからほとんど外には出ません。でも、すぐそこのビルにGCFが入るというから、あと数年もするとすごい人になりますよ」
2人が指差した先には、工事中の高層オフィスビル「I-tower(アイタワー)」があった。
GCF。松島新都市にはあちこちに「GCF歓迎」という大きな垂れ幕が見える。セントラルパーク駅前のビルにも大きな垂れ幕がかかっている。このGCFが、松島、いや、韓国の不動産業界で今、もっともホットな話題なのだ。
GCFとは「Green Climate Fund」の略で、日本では「緑の気候基金」と訳されている。2011年11月末に南アフリカで開かれたCOP17(第17回気候変動枠組み条約締約国会議)で設置が決まった国際機関だ。
気候変動や気温上昇を抑制したり、途上国の森林資源の減少を抑えるための資金を供与することなどが目的で2020年までに1000億ドルの資金を集めることになっている。韓国メディアの表現では「環境分野の世界銀行」だ。