現在、自衛隊と在日米軍の合同実働演習「キーンソード」が実施されている。当初の予定では演習の中に、アメリカ海兵隊第31海兵遠征隊と陸上自衛隊西部方面普通科連隊による水陸両用上陸戦訓練が沖縄のアメリカ軍射爆場である入砂島で実施される予定になっていた。
しかし、演習直前になって入砂島の合同訓練は中止となり、その他の演習に関してもマスメディアには(日本のマスメディアだけでなくアメリカのマスメディアに対しても)非公開ということになった。
もともとアメリカ軍は世界各地でひっきりなしに同盟国軍や友好国軍と合同演習を実施しているため、アメリカのマスメディアではキーンソード自体ほとんどニュースバリューはない。したがって、わずかなマスメディア(例えば「TIME」誌)以外はこの訓練中止が意味することを伝えてはいないのは不思議ではない。
しかし日本のマスメディアのほとんども、尖閣諸島を巡ってこれだけの緊張状態があるにもかかわらず、たとえ訓練中止の事実を報道したとしてもその問題点や影響などには触れていない。
オスプレイ配備を巡ってあれだけ大騒ぎをした日本のマスメディアは、一体何を考えて軍事問題の報道をしているのであろうか? 尖閣諸島を巡る日中間の双方の国家主権がぶつかり合う対峙との関連性からすれば、キーンソードでの水陸両用上陸戦訓練中止の持つ意味を取り上げる日本のマスメディアがほとんどない状況に大きな違和感を覚える。
水陸両用戦の日米合同訓練の問題点
アメリカ海兵隊と陸上自衛隊の合同水陸両用戦訓練は、今回中止になった訓練が初めての試みというわけではない。2012年の夏には、およそ2000名の第31海兵遠征隊におよそ40名の西部方面普通科連隊隊員が加わって、テニアン島やグアム島といった北マリアナ諸島で水陸両用上陸戦訓練が実施された。2011年秋には米国海軍と海上自衛隊によって、アメリカ海兵隊部隊を積載する海軍水陸両用戦隊を島嶼に無事搬送する訓練も実施された。それだけではなく、南カリフォルニアのアメリカ海兵隊基地・訓練場で「アイアンフィスト」(鉄拳)という名称のアメリカ海兵隊・陸上自衛隊合同訓練が7年前より毎年実施されている。