週刊NY生活 2012年10月27日417号

 原爆投下を命じたハリー・トルーマン米大統領(当時)の孫であるクリフトン・トルーマン・ダニエルさん(55)が、広島で被爆したセツコ・サーローさん(80)と長崎で被爆した山下泰昭さん(73)とともに10月15日から19日、ニューヨークの中高校生らに体験を語り、次世代を担う若者に平和構築を呼びかけた。

 今年8月に初めて広島・長崎を訪れたダニエルさんが被爆者と同席して体験を話すのは初めて。3人はNPO法人ヒバクシャ・ストーリーズ(HS)の招きで市内の高校を中心にニュージャージー州プリンストンの教会や国連など9か所で体験や証言を伝えた。

 17日昼はジャパン・ソサエティー(JS)で、5つの高校からの教師・生徒240人を前に語った。

 ダニエルさんは、6年前に「サダコの鶴」で知られる佐々木禎子さんの兄・佐々木雅弘さんと電話で話したことがきっかけで、2年前に「サダコの鶴」がニューヨークの9・11トリビュートセンターに寄贈された際に直接会って広島訪問を求められ、今年8月に広島・長崎を初めて訪問し、多くの被爆者の話を聞いた経緯を話した。

ジャパン・ソサエティーでの講演(左から、モデレーターの源和子さん、サーローさん、ダニエルさん、山下さん、川崎さん)

 「聞いたことを伝えて。そうすれば二度と起こらないから」と多くの人から言われ、伝える責任を感じたと締めくくった。

 サーローさんは「話すたびに苦しい。でも二度と繰り返さないために大切だと思うから」と言い、山下さんは「戦争に勝者はいない。聞いたことを伝えて平和な社会をつくってほしい」と呼びかけた。

 ピースボート共同代表の川崎哲さんが同団体の活動を通じて次世代への継承活動の事例を紹介した。

 会場の高校生は真剣に聞き入り、「日本の若者は知っているのか」「原子力開発についてどう思うか」などの質問が出された。

 講演後、JS教育プログラム副部長で本講演の企画をした源和子さんは「どういう叡智が必要か、被爆者の証言を聞いて考えてもらいたい。被爆者証言は20~30年後にはもう聞けなくなる。ダニエル氏が参加したことは次世代に継承していくヒント」と話した。

 ダニエル氏は「子供たちに話せて、いい経験だった。当事者の孫として継承活動の責任を感じている」と話した。

(小味かおる、写真も)

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