どこまで厳しく行うべき? 日本のBSE検査

BSE沈静化の中での不安の種(後篇)

2012.10.19(Fri)漆原 次郎

 人間の思考におけるリスクとは、単純に死亡する確率が高いか低いかの観点だけにはとどまらないのです。今後は、科学的とはまた違う側面も含めて、総合的にリスク評価をしていかなければならないと思います。

非定型BSEを封じ込めてこその終焉

──最近は「非定型BSE」という言葉を耳にすることがあります。食品安全委員会の「プリオン評価書(案)」でも言及がありました。これはどのようなもので、どう捉えればよいのでしょうか?

吉川 世界的に流行した定型BSE以外に、異常プリオンたんぱく質の分子量が従来と異なる「H型」と「L型」とよばれるBSEが存在します。これが「非定型BSE」です。

 特にL型は、定型BSEよりも病原性が強いと考えられます。異常プリオンたんぱく質が検出される部位も、定型BSEとは異なり、前頭葉や筋肉という奇妙な例もあります。

 非定型BSEの症例は、世界でまだ60件ほどしかありません。しかし最近では、偶然に発生した非定型BSEが、英国における定型BSEの原因となった可能性がある、という考え方が主流になってきているのです。

 また、プリオン遺伝子の変異により起こる非定型BSEがあることが分かっています。ウシも、ヒト型に遺伝子改変をしたマウスも、サルも非定型BSEに罹ります。さらに、ごく最近では、非定型BSE株を動物から動物に感染させると、定型BSEの性質に変わるというデータも報告されています。

 これまでは、非定型と定型は区別して考えられてきました。この2つが、同じ性質のものだとすると、非定型BSEも避けなければならないことを前提に規制を考えていかなければなりません。

 定型BSEのことだけを考えれば、流行の終焉後は、肉骨粉を再び餌として使うなど、元の状態に戻してもよいことになります。しかし、非定型BSEから、わずかな率であっても定型BSEが生じる可能性を考えれば、また、非定型BSE自身が流行を起こす可能性を考えれば、それに応じた封じ込め対策を考えなければなりません。

 日本は2013年にも、国際獣疫事務局(OIE)から安全性最上位の「無視できるBSEリスクの国」の認定を受ける見込みです。欧州の大半の国も同様です。それまでに、非定型BSEを餌などで回さない新たな規制を作らなければならないと思います。

 定型BSEの総括をする前に、非定型BSEへの対応を取らなければ、また新しい型のBSE問題を残してしまうことになります。それでは幕を引いたことにはなりません。

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