2012年8月、ウクライナ政府は、黒海棚の「スキタイ(スキフスキー)ガス鉱区」の国際入札につき、エクソンを主幹とする国際コンソーシアムの落札を承認した。

 ウクライナの1次エネルギー供給源の約4割を占める天然ガスは、2度の「天然ガス戦争」を経て、平均輸入額は8倍、輸入総額は4倍近くに跳ね上がり、ウクライナ経済回復の足かせとなっている(図1参照)。

 一方で、ウクライナ迂回ルートたるノルドストリームの稼働が迫り、エネルギー輸送大国ウクライナの立場が揺らいでおり、ウクライナ政府は国内ガス田の開発、LNGターミナル建設、と矢継ぎ早に計画を打ち上げている。

輸入依存から自給へ

 ウクライナの天然ガス輸入依存度は大きいが、1次供給源全体の自給率は実は低くない。石炭は自給可能であるし、天然ガス、原油も一定した生産量がある。

 これに独立以降のエネルギー消費の落ち込みが加わることで、自給率は相対的に上昇し、現在ではほぼ5割に達している。

 天然ガスだけを見ても、「ガス戦争」後、ガス輸入量は減少し、自給率は上昇している(図2参照)。

 とはいえ、単価の上昇は顕著であり、ガス輸入額は右肩上がりで上昇し続けている。直近の2011年度統計では貿易輸入の17%、対ロ貿易輸入の48%を天然ガスが占めるに至っている。


 このような状況下で、対露ガス依存は、外交圧力を受けやすく、かつ高値のガスを押し付けられることを意味することになる。

 現状では、ウクライナの輸入手段は、旧ソ連時代に敷設されたパイプラインのみであり、必然的にロシアが唯一の供給源となっているからだ。

 さらに、2009年1月の価格フォーミュラ導入により、ウクライナは毎年、一定量以上の天然ガスを、時としてヨーロッパ諸国やスポット市場を上回る価格で買わねばならず、政権の苛立ちが、ハリコフ合意ティモシェンコ裁判へつながっていった。